『家具工房旅する木』は豊かな「暮らし」、「心」、「時間」をご提案、ご提供します。


つむじ風通信

実は、学生の頃シナリオライターになりたくて、新聞社のコンペに出展していました。
箸にも棒にも引っかかりませんでしたが‥
文章を書くのは好きなので、妻のそよかぜ通信とともに、日常でのちょっとした出来事を
載せていこうと思います。なんちゃってシナリオライターにお付き合い下さい。

3/30 ”粗大ゴミランキング”

もうすぐ4月だというのに、北海道は寒い日が続いていますね。
昨日もうっすら雪が積もりました。
それでも、回りの田畑には、融雪剤が撒かれ、白一色だった景色が、
処どころ、水墨画の様な淡いグレーに染められています。
北の大地に住む人はこの時期、遅かりし春を、自らの手で引き寄せようとするのです。

昨日の読売新聞に、東京23区の粗大ゴミランキングの記事が出ていました。
第一位こそ、布団でしたが、その後の上位は家具が独占!(悲)
第二位が”箱物家具”といって、箪笥や、食器棚ですね。年間53万個ですって。
第三位が”椅子”(年間49万脚)、第六位が”テーブル”(年間19万個)がランクイン。
ランクインっていうと何か良い事の様なので、ダメですね。

年間53万個って、一日に換算すると、約1500個ですよ。しかも東京23区だけですから…
全国だったらいったいどうなっちゃうのよ!ってこういう話しになると昔から
オカマ言葉になてしまいますのよ!。

そんなにたくさんの家具が捨てられるのはなぜなんだろう?
・壊れた。
・引っ越し先で必要なくなった。
・古くなった。
・新築にして、新しい家具が欲しくなった。
・模様替えしたかった。
・…

理由はいっぱいありますよね。
でも、どの理由にしてもやっぱり根本的の理由は、その家具に愛着がないからですよね。
愛着があれば、大切な思い出が刻まれていれば、その家具は捨てられないと思います。

僕は毎日、家具と接しているので、家具を見る目というか、家具を見て感じる心は
あるのではないかと思っています。

そんな僕が、いろんな家具屋さんの家具を見ると、技術的に高いレベルの家具を
作っていても、やっぱり既製品を作っているメーカーの家具には、”顔”と”心”を
感じないんですね。
それはそうです。流れ作業でパーツが流れて来て、自分が担当の加工をして
次の人に回して、ずっと後の工程でいつの間に完成しているのですから。
その家具に一つひとつ、顔や、心があるはずがありません。

”顔と心”こそが”愛着”と深く結びつくのですから。それが無い家具は
長い年月を、そして世代を超える事ができないのです。 

新聞の記事を読んで、顔と心と、そして物語のある家具を作っていこう。
と改めて思いました。
壊れたら修理して使ってもらう。
お父さん、お母さんが、さらには、おじいちゃん、おばあちゃんが使っていた家具を
子供が、孫が使う。
そんな風に使ってもらえたら、その家族も、僕も、家具も幸せですね。

  

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3/10 ”いのちの食べ方”

予めご了承願います。
今日のつむ通は、ちょっと重い内容で、長〜いんです。
でも、何か感じることがあると思うので、是非最後まで読んでみて下さい。
前回も本の紹介だったのですが、今回もある本の紹介です。

我が家では妻が、出来るだけ体に気を使った食事を心がけています。
肉、乳製品、砂糖、小麦粉、油などをなるべく控えた食事を作っています。
(僕は妻ほど気を使っていないのですが…)

ちなみにもうすぐ始めるカフェも、そのようなお菓子を提供していきますよ。
これがなかなかどうして。すごく美味しいんです。牛乳も砂糖もたまごも使わなくて
美味しいお菓子出来るの?って僕も思うんですが、ハマるんです。

って話しが反れちゃいました。

そんな妻に「この本読んでみて。」と紹介されました。
『いのちの食べかた』著 森達也 
という本です。

皆さん、ほとんどの方が牛肉、豚肉、鶏肉、北海道ではジンギスカン、最近は鹿肉
僕のふるさとの長野県では、馬肉、などなど…食べますよね。
きっと、一日に必ず何かしらの肉を食べると思います。

スーパーでパックになって売ってますよね。じゃあ、パックになる前は?
って想像すると、北海道に住んでいる僕は、もう牧場です。
美瑛の丘の斜面にのんびりと草を食べている風景です。

でも、本当はその中間の過程があるんですよね。当たり前です。
さっきまで草を食べていた牛が、指をパチンと鳴らしたらパックに詰められている
わけがないですから。

誰かがその牛や、豚を殺してるんです。殺してくれているんです。
殺してさばいて、それぞれの部位に分けてパックにしてるんですね。
魚はその過程がテレビでも、スーパーでも当たり前のようにやってますよね。
最近では回転寿しでも、マグロの解体ショーをやってます。
でも、牛やブタは見た事がない。

一年間に日本人が食べる量から単純に計算すると、一日に牛は3500頭、
豚は45,000頭が解体されているんですって。
それなのにその過程のことを、僕たちは何も知らない。子供にいたっては、
食べている牛肉が、あの牛だということすら知らない子供が多いんだそうです。

この本には、牛や豚が”と場”にやって来て、解体される時の様子が書かれています。
とてもショッキングな内容です。

この本の中の内容をちょっと抜粋させてもらいます。

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牛や豚がと場で殺される理由は、僕らが食べるからだ。ところが、僕らは彼らの
哀しみを知らない。だから平気で肉を残す。残した肉はゴミ箱に捨てられる。
でも彼らを殺す役割を引き受けた職人たちは、肉の一切れでも無駄にしたくない
とばかりに、汗をかきながら懸命にナイフを振るう。
命を食べるからこそ、命を無駄にしないことを、彼らは知っている。
++++++++++++++++++++++++++++++

エスキモーも、モンゴルの遊牧民も猟や、放牧で得た動物を、血の一滴まで
無駄にしないんだそうです。命の重さと尊さを身をもって感じているんですね。

++++++++++++++++++++++++++++++
僕たちは肉を食べる。つまり、生きていた動物たちを食べるという事だ。だから、
彼らを殺しているのは僕たちなんだ。もしそれが嫌ならば、ベジタリアンになることだ。
でも、植物だって「いのち」であることに変わりはない。僕らは生きるために
他の「いのち」を犠牲にするしかない。僕たちはそうやって、他の「いのち」を犠牲に
しながら、美味しいものを食べ、暖かい家に住み、快適で便利な生活を目指して来た。
その営みを僕は否定する気はない。でもならば、「いのち」を犠牲にしていることを、
僕らはもっと知るべきだ。…
++++++++++++++++++++++++++++++

確かに、今の僕たちの生活は、「いのち(死)」から随分遠いところにいますね。
本当は生と死は表裏一体で、今”生きている”ということは、すぐ隣に”死”があって、
その両方を含めて「いのち」なのに、”死”について、目を背けている。だから
”生”も意識出来ない。

僕たちは肉を、魚を、野菜を食べているのではなく、「いのち」を食べているんですね。
他の”死”を食べて、生きている。
このことを、自分自身も忘れずに、子供たちに教えていかなきゃなぁ。と思います。

食べ物だけでなく、僕の家具を作る仕事だって、いのちを犠牲にして成り立っているんですね。
”木”だって、切られたくなかったはず。倒される時、痛かったろう。悔しかったろう。
哀しかったろう。そのいのちと引き換えに、僕は生かされ、家族を養っているんですね。

だから良いものを作ろう。とか、無駄にしないようにしよう。とか、そんなことは自己満足で、
本当は許されることではないんと思うのです。自分が誰かに食べられたり、使われるために
殺されるとした時、「美味しく食べてくれるんだったら、良いものを作ってくれるんだったら、
殺してもいいよ。」なんて決して思わないと思います。
でも、生きるために、そうしなければならないのだっだら、せめて、その犠牲になった「いのち」の
気持ちを知っていることじゃないのかな。と思うのです。

とても読みやすく、ほんの数時間で読み終える本ですが、そんなことを考えさせられる本でした。

  

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2/28 ”あなたのシンボルツリーは?

「樹木に神が宿る。」

樹木信仰、そんな民族がいるんです。正確には、いたんです。

”古代ケルト人”
紀元前4〜3世紀にヨーロッパで、栄えた民族で、古代ローマに
支配、迫害され、歴史から消え去った民族なんです。
エンヤを思い浮かべる方も多いと思います。

この古代ケルト民族は、日本人に似た信仰心を持っていたんですね。
「この世に存在する全てのものに魂があり、神が存在する」
特に樹木という生命に神秘を感じ、樹木と交信し、精神的にも、肉体的にも
樹木という生命とつながり、様々な方法で樹木に宿る神と交流を持ったんです。

なんて随分難しいことを知っている様な言い方をしていますが、実な今読んでいる
本の内容なんです。僕にとっては、とっても面白い本なんです。

『古代ケルト聖なる樹の教え』

という本です。

古代ケルト人の樹木信仰は、”誰もが一本の樹木を抱いて生まれて来る”
というもので、生まれた月日によって、自分自身の人生と分かち合うように
聖なる樹木が存在し、あなたが生まれて来た使命を示す、運命論として受け止められて
いたんですって。

そして、21の聖なるシンボルツリーが、それぞれの生年月日に振り分けられていて、
そのシンボルツリーの持つ特徴、性質、役割、使命などが示されているんですね。

僕の場合は、これがとても当たっていると思います。ちなみに僕のシンボルツリーは
”トネリコ”という樹木。すごく粘りがあって、強い木なんですね。
イタリアの建築家であり、家具デザイナーでもある、ジオ・ポンティーの超軽量椅子
スーパーレジェーラは、トネリコで作られているんですね。綺麗な椅子です。
好きな椅子ですね〜。

話しが反れちゃいました。。
シンボルは「宇宙の調和」
樹木の神託は「あなた一人欠けても、この宇宙は成り立たない」
魂の性質は「野望」「信念を貫く」「拒絶」 

なんですって。それぞれの樹木の示すところを、とても詳細に説明してあるんですよ。
占い感覚で見ても面白いし、もっと深く、”ケルト宇宙”の神髄を探っても楽しいんです。

つむ通では、たびたび触れていますが、僕は”気”や”波動”といった、目に見えない世界
にとても魅かれ、もちろん、存在するすべてのものに神様がいると信じています。
なのでこの本の、”ケルト宇宙”の教えに、とても共感でき、しかもそれが、樹木に宿る
精霊との交流により形成されたということに、なんだかとても嬉しくなりました。

僕たちが今生きているこの世界と平行して、いつでも、どこかしこで、精霊たちの世界が
存在していて、時折、僕たちに運命の知らせをもたらせてくれる。
ただ、混沌とした日常の中で生活している僕たちは、そのことになかなか気が付かない。

時折、気に入った森に入って、ケルト宇宙の時空に迷い込んでみたいなぁ。
そういえば、最近、ニン
グルの森へ行っていないな。と、ライフワークのように
季節ごとに行っていた、富良野の原始が原に、無性に行きたくなりました。

精霊たちの世界を垣間みる時、ちょっと恐いのだけれど、その美しくて神秘な、優しくて
力強い世界に、自分の心が深く透き通る様な、そんな気持ちになっていくのが、
なんとも心地良いんです。

日常に追われ、忘れかけていたそんな気持ちを思い出させてくれた一冊の本でした。

  

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2/23 ”冬の楽しい一日”

前日の嵐がウソのように、一昨日の日曜日、当別はすごいよい天気で、
風の強い ここ、東裏小学校の周辺も、穏やかな天気でした。

そんな中、地元の方が学校の敷地内に滑り台と、かまくらを作ってくれました。
滑り台は地元の子供たちのためで、僕の息子も、昼休みに毎日ソリで遊びました。

その横のかまくらは…
これは大人のためですね〜。
完成するや、早速地元の大人たちが集まって、真冬のバーベキュー。
もちろんビールで乾杯!
僕も午前中で仕事を切り上げて、乾杯〜。

せっかくかまくらがあるのに、あまりによい天気に、外でジンギスカンを
ジュージュー。もちろん夕方、寒くなって来てからは、かまくらの中に移動しました。
ちゃ〜んとかまくらの中には煙突がついていて、中で火を焚いても大丈夫に
作ってありました。さすがですね〜。

子供のころ、少ない雪をかき集めて小さいかまくらを作ったことがあったな〜。
こういう遊びは、童心に戻してくれますね。
いい歳のおじさんたちも、なんだかとても嬉しそうでした。

かまくらを作ってくれた方は、毎年作っているそうで、かまくら作りの七つ道具を
見せてくれました。なんと、スコップとかも手作りで、先がギザギザになっていたり
するんですね。

「来年はグラウンドの方に、もっとおっきいやつをつくるか!」
「花火もやるか。」
「甘酒や、おしるこもやろう。」

なんて、かまくら一つで、とっても盛り上がるんですね〜。
おそらく来年は、もっと大々的にやることになると思います。楽しみ。

今年の当別は雪が多くて、毎朝カーテンを開けて積もっている雪を見ると、
ちょっと憂鬱になっていたのですが、その雪のお陰で、こんなに楽しめるんですね〜。

この雪だって、言ってみれば地元の特産物ですね。どうせなら活かさなきゃ。
今年、楽しみにしているのは、昨年仕込んだ、お味噌。毎日飲んでいる味噌汁は、
近所の農家の方からもらった味噌なんですが、めちゃくちゃ美味しいんです。
それと、お豆腐作り、そしてすごい楽しみなのが、地元のワラと、大豆でつくる、
ワラ納豆つくり、いつかはお醤油も作ってみたいなぁ。なんて、ここ(田舎)ならではの
楽しみをいっぱいしたいと思っています。

そんなことをかまくらの中で、みんなと楽しいお酒を飲みながら考えていました。

そして…

ちょっと飲み過ぎてしまい、昨日はダウンしていました。
普段、ほとんどお酒を飲まない僕は、自分が思っているより大部、
弱くなっているようです。。情けない…

  

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2/9 ”さすが我が息子!”

 

「パパ、ないよ〜、ないよ〜。」
「???… 何が?」
「ほら、ここ、ここ。」
「???ん〜?」
「ここのやつ。」
「あ〜!!!え〜!?気が付いたの?さすが家具職人の息子!天才だ!

何の会話でしょうか?

今まで自宅で、ずっと上の左の写真の椅子を使っていました。
そして、先日、新作のアウラチェアー(右写真)を
使おうと持って来たんです。。

僕が「デザインも座り心地も素晴らしいね〜。」なんて自画自賛していたら
3歳の息子が「パパ、ないよ〜」って先ほどの会話が始まったのです。

何が無いんでしょうか?解った人〜?。

そう、座面の下の”貫(ぬき)”が無いんですね〜。
通常の椅子は、強度を考慮して座面の下に四方グル〜と”貫”という部材を
回すんですね。
でも、僕はデザインをスッキリさせたくて、貫を使わない椅子を
よくデザインします。
ちゃんと強度は考慮して、見えないところで対策をしてありますよ。

この貫がないのを、息子がすぐに気が付いて、「ない、ない!」って騒ぐんです。
よく気が付いたな〜。さすが我が息子!なんて感心していたら

…!!!そうか!

3歳の息子にとってはこの貫、強度ではなく、必需品だったんですね。
そう、息子は自分の椅子に座る時、まず僕の椅子に登って、隣の自分の椅子に
乗り移るんです。
僕の椅子に登る時、体が小さいから貫に足をかけて、よじの登るんですね。
その大事な貫が無いので、登れなくなっちゃったんです。
貫が無いのは、息子にとっては一大事だったんですね。それですぐに気が付いたんですね。

「これは失礼!」とアウラチェアーを自宅で使うのは、しばらく、息子がもうちょっと
大きくなるまで延期。今までの椅子に戻しました。

我が家では、椅子の貫は、強度ではなく、はしごとしての役割があったなんて…。
今度椅子をデザインする時の参考にしようっと。小さな子供が足を乗せやすい高さに
貫を入れてあげる。とか、ちょっと平らな部分を作ってあげるとか…
う〜ん、デザインの幅が広がりますね〜。

それにしても、”天才”だの、”さすが家具職人の息子”だの、思いっきり親バカでした…

  

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2/5 ”家具職人という仕事”

 

『家具職人』

と聞いて、皆さんはどういうイメージをしますか?

頑固、寡黙、口下手、ヒゲおやじ、バンダナ、貧乏、鼻毛(ほこりだらけの
中で仕事するので、延びるのが異常に早い)、真面目…

まあ、どれも大したもんではないですね〜。
同じ職人でも、大工さんとは大きく違うんです。技術的な事はもちろん、
人種が違うんですね。僕が感じるのは。

旭川での修行時代、工場の拡大で、大工さんが来ていた時のこと…。
10時、3時の休憩が15分で終わり、チャイムが鳴るんです。
すると、家具職人達はさっと飲みかけの缶コーヒーを飲み干し、仕事に戻ります。
が、大工さん達は、まだおしゃべり。その後、しばら〜くおしゃべりした後、
「そろそろ戻るか〜。」って感じ。

この例だと、ちょっと大工さんが悪く捕らえられますが、要するに、
家具職人は、細かくて、真面目で、こじんまりしてるんです。実際、小柄の人が
多いし。(僕も例外ではありません。)
仕事も、地味〜で、細かい作業なんです。ノギスという寸法を測る器具で、
コンマ何ミリなんてやってるんだから。

それでも数ヶ月前、ダイニングテーブルと椅子のセットをご注文下さったお客様。
その後、家具を作っている過程を子供に見せたい。と工房へ家族で来て下さったりして、
ようやく先日、待ちに待った納品の日を迎えました。

部厚いナラの天板を運び込むと、「わー♪すごい迫力〜!」と、感嘆の声。そして奥様が、
「実は須田さんの工房で、主人が突然テーブルと椅子を買うと言い出した時、
正直ビックリしたんです。でも頼んで本当に良かった。」

さらにご主人から、「須田さんの仕事は人を幸せにします。今日はここしばらくで、
一番幸せな日です。」と、最高に嬉しい言葉をかけて頂きました。

いつも感じるのですが、お客様の喜んだ顔を思い浮かべながら、僕自身、最高に幸せな
時間と共に、昨日まで僕のものだった製作した家具が、お客様の元へ旅立ってしまった
淋しさを感じながら、帰り道、車を運転するのが、なんとも心地良いのです。

世の中にたくさんある仕事の中で、お客様と出会うところから、打ち合わせ、製作
納品までの全ての工程を独り占め出来る仕事というのは、そうはないと思います。

寒い体育館で一人で作業していると、多くの人に、「淋しくない?」と聞かれます。
そりゃあ、淋しいさ。でも大きな声で歌を歌いながら仕事できますもん。
娘に「パパ、また鼻毛出てる。」と言われます。
そりゃあ、出るさ。ホコリから守ってくれてるんだもん!

それでも、僕が人を幸せにできる仕事といったら、この「家具職人」という仕事しか
ないんですもん。最高に素敵な仕事なんです。

先ほどのダイニングセットを納品したお客様。ご注文下さった前後にちょうど
赤ちゃんが生まれました。この赤ちゃんと同じ年を、納めた家具も重ねて行くんですね。
子供と同じように大事に使われ、家族の思い出を刻み、赤ちゃんが大人になって、そして
おじいちゃん、おばあちゃんになった時、使ってもらえていたら…。

その頃、多分『旅する木』は存在していないと思う。
ダイニングテーブルや、チェアーの裏に押された『旅する木』の焼き印が、
の存在を残し、「昔、”旅する木”っていう家具屋さんがあったんだね。
腕の良い家具職人さんだったんだね。」なんて会話が交わされたら、
家具職人冥利に尽きますね。

”作品が後世に残る”というのも家具職人という仕事の良いところでもあり、
恐いところでもあるんですね。
だから、いつもそういうことを意識してデザイン、製作しているんです。

『家具職人』、僕にとっては、最高に素晴らしい仕事なんです。

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1/19 ”憧れちゃう”

家具をデザインする時、色んな寸法を決めなければいけません。
中に入れるもの、使う人のサイズなど、制限がある時は、決めやすいのですが、
特に制限のない場合、これが意外と難しいんです。

僕が一番「難しいなぁ」と思うのは、それぞれの部材の太さですね〜。
特に椅子の脚などの部材の太さ、これは本当に大変!
数ミリでイメージが全然違ってしまいます。

図面は平面で、奥行きが表現されないので、当てにならないんですね。
なので、イメージに不安があるものについては、模型を作ります。
新作の椅子は必ず1/5の模型を製作しています。
その模型を見て、変更した模型を製作、それをみてまた…
この作業を5、6回繰り返すんですね。

目線の問題もとても重要で、模型で「行ける!」と判断したものは、
今度原寸で試作をします。そこでまた変更がある場合、変更した試作をします。
椅子の場合、多い時で30回ほど繰り返す時もあるんですよ。

こんな事を繰り返しているうちに、何となく自分の中の寸法が身に付いてきたなぁ。
と最近になって感じることがあります。まあ、好みの数字があるってだけの
話しなのですが…。

僕は一応理系の大学を出ているので、よくテレビで数学家の人が
「この数式は美しい」などと言っているのが格好よくて、
「この数式によって、導き出されたこの寸法…
う〜ん、美しい!」なんて
実は全くわけわかっていないのですが、一人でやっているんですね〜。

なので、誰かに、「その寸法の根拠は?」なんて質問されたら、それこそ
学校なだけに、黒板を使って、「それは、この数式のX=◯、Y=△を当てはめて…」
なんて始まっちゃう。そんな機会がないものかなぁ。なんて一人笑いしていて、
冬休み中の娘に、「何笑ってるの?気持ち悪い〜。」なんて言われます。

中谷美紀(好きなんです…)のようなお客さんが来て、

中谷「ここの寸法は?」
僕 「これはこの数式の…」
中谷「すご〜い!素敵〜。」
僕 「僕は木工家である前に、数学家ですから。」
中谷「そうなんですか〜?素敵ですね〜。」

憧れちゃいますね〜。

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1/5 ”こんな風に生きたい”

皆さんはこの年末年始、どのように過ごされましたか?
先日のつむ通にも書いたように、僕は富良野で過ごしました。

富良野にノンノも連れて行ったのですが、慣れない場所なので、
「ク〜ン、ク〜ン」と寂しそうな鳴き声や、「ウ〜、ワオーン」という
遠吠えをず〜っとやっているので、なんと、朝6時前から、夜は9時過ぎまで、
一日に6、7回散歩に連れ出しました。
「富良野に何しに行ったの?」と問われれば、「犬の散歩しに。」と答えざるを
得ない年末年始でした。

でもそのお陰で、自然の作り出す一瞬の芸術をたくさん見る事が出来ました。
雲に浮かぶ天空の富良野岳。見事でした〜。
カラマツ林の向こうに揺れる虹。
夜空を一瞬の電光石火のごとく切り裂く流れ星。一等星級でした!

そしてつい先ほど、目の当たりにしたのは…
夜の9時過ぎ、キーンと凍る様な空気、満点の星空と、大宇宙の中を散歩していました。
折り返しの場所に来たので、振り返った時、向こうの山から天空にスーと延びた
淡い光。何だろう?と思って見ていると、その光がだんだん濃くなっていって、
やがて、山の頂きから日の出?いや、月が現れ始めたのです。
月の光が天空に延びているんです。サンピラーならぬ、ムーンピラー(?)。
だんだんと月が姿を現して来るのです。

月は、日が明るいうちにすでに空にあって、日が沈むにつれて明るくなるもんだ
と思っていたので、月が、日の出のように、山から登る姿、
そしてムーンピラーにとても感動し、思わず、月に向かって「ありがとう!」
そして、ノンノにもついでに「ありがとう。」

富良野、麓郷の、車や人影の全くない道路で、日の出の様に、月がその姿を見せるのを
一時も見逃すまいと、見つめていました。
凍りつく様な寒さと、音の無い世界、僕の雪を踏みしめるギュッ、ギュッという足音だけが
響いていました。
 
自然は何も語らず、ほんの一瞬、美しい姿をひっそりと見せてくれます。
誰に自慢するわけでもなく、誰に見せたいわけでもなく、何かを主張したいわけでもなく。
猛烈な厳しさの中、一瞬、全てを忘れさせる美しい姿で、ただ、そこに存在する。

こんな風に生きたいものです。

年初め、自然が作り出す、こんな美しい一瞬に出会えるなんて、とても幸せで、
気分が良いと共に、自然の偉大さを目の当たりにし、とても謙虚な気持ちになりました。

「あなたはただ家具を作っていれば良い。ただそれだけで、全て(宇宙)と
つながっています。」

そんな風に言われた気がした。



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2010/1/4 ”明けましておめでとうございます”

 

楽しみにしていた年末年始のお休みも、終わってしまいましたね。
明けましておめでとうございます。

皆さんのところでは、初日の出は見られましたか?
僕ら須田家の家族は、今年も妻の実家の富良野で年を越しました。
愛犬ノンノと散歩しながら初日の出を期待したのですが、
残念ながら曇っていて見られませんでした。。

妻の実家は、富良野の麓郷で『ふらりん』というユースホステルをしています。
毎年元旦の行事で、お餅つきをします。全部で7,8臼つくので、
結構体力を使うのですが、元旦に自分でついたできたてホヤホヤのお餅を食べるのは、
気分が良いですね。

そして、今年はどんな年になるのかな〜?なんて考えながら、毎年スケッチブックを
広げて、今年の目標を立てるのも元旦の行事(ちょっと大袈裟?)です。

今年も10個くらい目標を立てました。得意の、”数打ちゃ当たる”戦法で、
打率3割超えれば御の字。まがいなりにも、イチローを超えて、4割達成したら、
すごい事。という作戦です。
それでも、年始に目標を立てて意識していると、木の様に、曲がったり反ったり
二つに割れたりしながらも、目指した方向に進むので不思議です。
いつものように、その過程を楽しみながら、家族で協力し合いながら
マイペースで進んで行こうと思います。

身の回りの出来事はすべて、”結果”で、良い出来事も、悪い出来事も原因は
”心”の中にあり、自分が引き寄せているのだそうです。
1年は525,600分。そのうち1分でも長く、清く、正しく、美しい”心”を
持てる時間を増やしたいなぁ。と思います。
そして、お客様が、旅する木の家具を使う事により、そのような気持ちで
生活出来る時間が増えてくれれば、とても嬉しいです。
そして、そのような力のある家具を、心を込めて作っていこうと思います。

そして、毎年目標に掲げながらなかなか出来ないでいるのですが、家族、特に
妻に対して、感謝し、きちんと言葉で表現するようにしたいなぁ。と思います。
この目標が今の僕にとって、最も難関な目標ですね〜。
なので、あえて、皆さんの前で発表しました。
ついつい二の次三の次にしちゃいがちなので、工房へ来られる際には、
「奥さんに感謝の言葉をかけてますか?」と一言、言って頂けると嬉しいです。

今年も、出会っている人を大切に、これから出会う人を楽しみに、丁寧に心を込めて
家具作りをしていこうと思っております。
どうぞ、よろしくお願い致します。
そして、皆様にとって、素晴らしい一年であるように、祈っております。

札幌のすぐ隣の田舎町、田園風景ど真ん中の小学校
〒062-0213 
北海道石狩郡当別町東裏2796-1 旧東裏小学校
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