あんた、合格や! | 札幌のオーダー家具・オーダーキッチンなら家具工房【旅する木】

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あんた、合格や!

いや〜、Hey!Say!Jumpの中島裕翔くん、本当にイケメンでしたね〜。
びっくりしました。
そしてとても紳士的で、僕らに丁寧に接してくれて、気持ちがよかったです。

そう、昨年末にNHKの『鶴瓶の家族に乾杯』で、当別町が特集され、その中でHey!Say!Jumpの中島裕翔くんが旅する木に来てくれて、紹介してくれたんですね。

本当に突然来るんですね!
僕はこういうのって、実は事前に連絡が来ていて、ビックリする芝居をしているもんだとばかり思っていました。

番組をご覧になっていた方もそう思っている人が多いみたいで、後でたくさんの人に、
「須田さんの驚いている顔を見て、本当に突然来たんだ。と思いました。」っと言われます。
そんなに驚いた顔してましたかね?(笑)

2月21日に放送されたのですが、中島裕翔くんが丁寧に、感じよく旅する木や、僕とくどけんの師匠と弟子の関係を紹介してくれたお陰で、反響がすごくて、それから一週間は何も仕事ができないくらい、問い合わせや、感想の電話、メールを頂きました。

本当に嬉しかったのが、
「放送を見て、こんな木の車椅子があるなんて知らなかった。父親にプレゼントしたい。」
「妻にこのような木の車椅子を乗せてやりたい。」
「お世話になっている社長にサプライズでプレゼントしたい。」
など、何台もの車椅子の注文を頂きました。

中島裕翔くんが来たまさにその時、ちょうど車椅子の製作をしていて、製作しながら、
「来年は本格的に車椅子を世に出して行くぞ!14年も試作をしてきて、やっと自信を持って世に出せる完成度になったから。車椅子をもう一つの太い柱にしていきたい!」と思っていた矢先だったので、本当に、本当に嬉しいです。

そして、反響で想定外だったことがあります。
それは、すでに引退した大工さんや、家具職人、亡くなった名工の親族の方から、
「テレビ見てたら、カンナ掛けてるシーンが写ってて、使わなくなったカンナを使って欲しい。」
「父が生前使っていたカンナがあって、どうしようか困っていて。よかったらもらってください。」

などと、たくさんのカンナが送られて来たことです。

カンナは職人にとって、最も大切な、そして愛着のある道具の一つです。
だから、引退後も捨てられずに持っていたんでしょう。

旅する木は無垢の天板は全て手カンナで仕上げています。
今時、天板の仕上げは、機械で素早くできて、技術のいらないサンドペーパー仕上げが主流で、手カンナで仕上げている家具屋さんなど、全国的にもほとんどありません。
でも、手触り、そして数年後以降の状態が全く違うんです。
カンナ仕上げの天板は、10年経ってもツルツルで、水が染み込むことがありません。
法隆寺が1000年保っているのも、柱の表面をカンナ(槍カンナ)で仕上げているからなんですね。

それだったらどこの家具屋さんも、カンナ仕上げにすればいいじゃないか。と思いますよね。
でもカンナを使えるようになるには、長い年月の鍛錬、修行が必要なんです。
”効率”が重視されている今のモノ作りには合わないので、残念ながら衰退する技術なんです。

旅する木は『世代を超えて欲しい』という思いで家具を作っているので、”効率”よりも、”手間”や”技術”を重視しています。

新人には真っ先にカンナやノミといった手工具を自分で買わせて、仕込みを教えます。
そして、自分のカンナを人に使わせることはない。
僕も、自分のカンナは誰にも使わせませんし、他の人のカンナを使うこともありません。
カンナはそれほど繊細な道具なんです。

そんなカンナを譲ってくれるということは、その思いも受け継いで欲しいという願いがあるんだと思います。

 

かつて、法隆寺の再築工事の時、西岡常一棟梁は、全国から腕のに覚えのある宮大工を募集しました。
その際、面接を行うわけですが、1000年の歴史を持つ法隆寺の再築なんて、宮大工にとってみれば、一生どころか、二生、三生に一度あるかないかの機会なわけで。
誰もが自分の腕前をアピールするわけです。
そこで西岡棟梁は、カンナを持参させる。
話など聞かず、じっとカンナを見て、一言。
「あんた、合格や。」
むしろ、逆の判断の方が多かったそうです。

 

送って頂いたカンナは、言葉よりも真実を語ります。
その人の、仕事に対する姿勢がそのまま表れます。
汗や手垢がついて黒ずんでいても、ビシッと研がれた刃物を見ると、生き生きとした魂の響きを内包していて、カンナそれ自身に、こちらが見られているような気がします。。
恐れ多くも、受け継がせてもらう。そんな思いになります。

また逆に、本当はお前はもっと力を発揮したかったんだよね。
と可哀想になるカンナもあります。
実はこっちのカンナの方が圧倒的に多い。

カンナを送ってもらう前に僕は言います。
「せっかく使って欲しいと送ってくれたとしても、僕がそのカンナの役割を終わらせる(もうこれは使えないと判断した場合、処分する)判断をする場合もあります。」と。

ちょっと上からで失礼な態度に感じられるだろうな。と思うのですが、
みなさん「それで結構です。」と言って送ってくれる。

生前のお爺さんが、(お父さんが)使っていた大事な道具だということは知っているので、捨てるに捨てられずにいたんでしょうね。
道具、特に刃物には、やっぱりなにか魂のようなものが宿っているような気がするもの。

テレビで僕のことを知り、その魂を生かすか、終わりにするかの判断を委ねられるというのは、職人として、ある意味とても光栄なことでもありますが、処分するカンナを手にしている僕自身は、結構な心の葛藤があるものです。
残しておいても、一生使うことはないので、
「すまない。」
と思いながら処分します。

使っていた人の魂なのか、宿ったカンナの魂なのかわからないけれど、踏ん切りがついて清正しているような気がします。
僕がそう思いたいだけなのかも知れないけれど。

そして僕は思う。
果たして自分のカンナは、どうなんだろう。
僕が作った道具箱の引き出しを開けて、並んでいるカンナに声をかける。
「お前たちはどうなの?誰かに引き継がれたい?それとも、俺が職人を引退する時、いっそのこと役目を終わりにされたい?それとも俺と一緒に棺桶入るか?」

 

実はそれぞれのカンナにそれぞれの個性がある。
もちろん、削られる木の方にも一枚一枚個性がある。
だから僕は、削られる木の個性にあわせて、使うカンナを選んでいる。

そんなものだから、色々な声が聞こえるような気がする。
「あなたの判断にお任せします!」
といういいヤツもいれば、
「知らねーよ。そんな先のこと。いいからもっとオレを使ってくれよ。」
というヤツもいるし、
「一緒に棺桶は入らないけど、私はあなたの入る棺桶をツルツルに削ります!」
なんてヤツもいる(笑)。

ああ、僕のカンナは、立場的には同等か、若干僕より上なんですよね。
だから、このカンナたちの行末は知らないけれど、僕が引退する時に、このカンナたちにかけてもらいたい言葉があるとしたら…

「あんた、合格や。」