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九死に一生からの、9.9死に0.1生

またやってしまった!
先々週の土曜日は亜麻祭りでした。
Instagramで、木の器とか、アウトレットの椅子とかを販売します!っとお伝えしておきながら、当日、急所、営業を中止しました。
Instagramをご覧になった何人かの方から「何があったの?」「もしかして…」など心配や、憶測を呼んでいるので、この場を借りてお話しします。
何があったかというと…
僕、またやってしまったんです。ノンノ(北海道犬)のことで。
ノンノはもう19歳で、頭を支える首の筋力も衰えて、顔は地面スレスレに下げているし、数メートル歩いては、ハアハアっと息切れして立ち止まっているので、遠くへは行けないはずなんです。
なので仕事中、ノンノをグラウンドに放していたら、危うく用水路に落ちてしまうところを、奇跡的に見つけて間に合ったという出来事が、亜麻祭りの5日前にあったばかりなのに。
もう二度と目の届かない状態で、ノンノを外に放してはだめだっと思ったのに…
ここ数ヶ月、ノンノは日中、工房でずっと寝ていて、だいたい夜の11時、真夜中の2時、朝方の4時台に起きて徘徊し始めます。徘徊中、オシッコやウンチをしてしまうので、その都度起きて、ノンノを抱っこして外に連れて行きます。
なので僕は慢性的な寝不足。
亜麻祭りの日、朝5時にノンノとまる(黒柴9歳)が起きたので、散歩に連れて行きました。
その前に2時と4時に起きているので、頭は寝ぼけてボーッとしていました。
5日前にノンノを放して大変なことになったことも、すっかり頭になくて、いつものようにノンノを道路に放して、まるだけ連れて、神社まで散歩しました。
ノンノはのんびりのんびり歩きたい。まるは思いっきり走りたいっということで、一緒には散歩できないので、いつも、ノンノは放して、自由にフラフラ気ままにさせているんです。田舎の農道なので、朝5時に通る車などまずないので、心配ない。
まると神社から戻ってくると、ノンノの姿が見えない。
いつもなら家の前の道路や、家の敷地内でウロウロしてるノンノがいないんです。
ノンノはそれほど遠くに行けるはずがないので、家の周りを探したのですが、見当たらない。道路の向こうの土手の下を探してもいない。
道路の手前にそこそこ水の流れのある側溝があって、わずか5メートルほどは蓋がない箇所があるので、もしかして…と思って覗き込んでもいない。
数十メートル毎に側溝の蓋を開けて覗き込んでもいない。
そうこうしているうちに亜麻祭り開始の7時になってしまいました。
亜麻祭りに向けていろんな準備をしてきましたが、ノンノの命には代えられない!
販売は中止にしました。
その後も散々探しました。
隣の貸し農園、農家さんの敷地、納屋、家の周りは田んぼや麦畑の中。
考えられるありとあらゆるところを探したのですが、見つからない。
10時、この時点でもう5時間。
しかもその日は晴天で、日当たりが良く、暑い。
どのような状況だったとしても、5時間も炎天下の中にいたら、今のノンノは相当衰弱して、もしかしたら…
ノンノは吠えないので、どこかにいたとしても、そこで倒れてハアハアと苦しそうに息をしているだけ。苦しそうに倒れているノンノが頭に過ぎります
なんとしても見つけなきゃっと、一度探したところも、もう一度探すのですが、一向に見つからない。
広い麦畑の中も、田んぼの中も、一列一列探したのですが、見当たらない。
12時。
今日だけで僕の首は真っ赤に日焼けして痛い。
さすがにもう生きている可能性は…
せめて遺体は見つけて、丁寧に葬ってあげたい。
19年、毎日一緒に工房に行って、一緒に帰って来て、ほぼずっと一緒にいたのに、最後がどこに行ってしまったかわからないなんてイヤだ!
しかも…
本格的な介護が始まった2年前から、ノンノはもうドックフードは食べないんです。
毎食手作りご飯なんだけど、それもここ1年くらいは、朝晩と同じご飯だと食べないんです。
お腹は空いているんですけどね。何度もご飯のところに行っては、匂いを嗅ぐんだけど、朝と同じだったら食べない。
それでいて、痩せていって、今は背中を撫でると背骨のゴリゴリがハッキリわかるほど。
なんとか食べて欲しくて、毎食毎食、味を変えたり、違うものを作ったりしているんです。これがとても大変で。
失踪する前日、実はこんなことがあったんです。
朝ご飯を作って食べさせて、夕ご飯はそれとは別のものを作ったのですが、味付けが似ていたからか、ちょこっと舐めたっきり食べない。
仕事を終えて帰ってきてから、自分のご飯も作らずに、ノンノのご飯を先に作ったのに、そっぽ向かれたことに頭に来て、つい感情的になってしまい、
「もう知らん!生きる気力のない奴は死ね!」っと言ってしまいました。
探している間、そのことが頭にこびりついていました。
ノンノは死ぬことを決心して、僕に死ぬところを見られないように、僕に悲しい思いをさせないように、どこかに隠れて、そこでひっそりと死のうとしているのかも?っという考えも浮かんで、泣きながら探しました。
「ノンノ、こんな最後はないよ〜」っと。
午後3時。もう10時間。
亜麻祭りも終わり、主催者の片付けも終わり、すっかり工房の東裏小学校の方は静かになっていました。
ノンノを探しながら、亜麻祭りの様子を見る限り、今年は例年以上にたくさんの人が来ている感じで、賑わっていました。
朝したであろう、ノンノの新しいウンチが、学校とは反対側の道路にあったし、学校の方は、まると散歩した方向なので、ノンノが学校の方に歩いていたとしたら、すれ違うはずなので、こっちは探していませんでした。
人がいなくなって静かになったし、もう学校の方以外に探すところはないので、一応、探してみました。
広い敷地の隅々まで探したのですが、やっぱりいない。
この時点でもう、ノンノが生きているということは諦めました。
とにかく遺体を見つけたい。
ノンノをちゃんと葬ってあげたい。
その一心でした。
学校の方は考えられないから、もう一度、家から反対側を探そうと、家の方に向かいました。
その時、微かに、空耳のように、「ホ〜〜」っとノンノの小さい小さい叫び声が聞こえたような気がしました。
立ち止まって耳を澄ませました。
その時、向こうからトラクターがやってきました。さっきの声がノンノだとしたら、とてもとてもトラクターの音で聞こえない。
トラクターは速度が遅いので、ちっとも行ってくれない。
気持ちは焦るので、待ちきれなくなって、「こっちの可能性はほぼゼロだから、さっきのは空耳だろう。とにかく暗くなる前に、家から向こうを探さなきゃ!」っと歩き始めました。
でも、万が一、さっきのがノンノだったら。ノンノの助けを呼ぶ叫び声だったら…
っと考え直して、トラクターが行くのを待ちました。
そして静かになったとところで祈るように聞き耳を立てました。
何も聞こえない。
もうちょっと待ってみよう。
2,3分だと思うのですが、待っていると、二度、「ホ〜、ホ〜」っとノンノの声。
ノンノだ!生きてる!!!
一期に鼓動が早くなりました。
すごく遠くのような、近くのような。
声は小さいんだけど、その割には近くで聞こえる。
前の農家さんの家の前の側溝を覗き込んだのですが、真っ暗で見えない。
「ノンノ!ノンノ〜!」
その時、側溝のトンネルの中から「ホ〜」っとノンノのか弱い叫び声がしました。
20mほどのトンネルの反対側にダッシュして覗き込むと、そこから1mほどのところに、半分は土に埋まった側溝の隙間からノンノの顔が見えました。
トンネルと土に挟まれて、ほぼ身動きができない状態で、「ホ〜、ホ〜」「助けて、助けて〜」っと吠えていました。
「いた!いた!ノンノいた!生きてる!」
叫びながらスコップを取りに、工房に走りました。
必死にスコップで側溝の土をどかそうとすると、僕に向かって一斉に飛び出してくるものが…
なんとノンノのすぐ手前の土の中は、スズメバチの巣になっていたんです。
そこをほじくり返そうとしているわけですから、スズメバチが一斉に僕に襲いかかって来ました。
慌てて逃げながら家に向かって、長袖のジャンバーを着て、冬用のニット帽を被って、マスクをして再び戻りました。
スズメバチに構っていられない!刺されようがどうなろうが、ノンノを救い出す!
そう決めてスズメバチの巣をスコップで粉々にして、土を掻き出していくと、ようやくノンノの前足や体が見えて来ました。
でも、ノンノのいるところは側溝のトンネルの1mくらい中なので、引っ張り出そうにも、手が届かない。僕の体は入らないので、トンネルを壊すしかない。
家からツルハシを持ってきて、気が狂ったようにノンノの上のコンクリートを壊そうとすると、ありがたいことに、手前50センチくらいは、コンクリートではなく、コンクリートブロックで蓋をしていたので、それほど苦労せず、コンクリートブロックを取り除くことができました。
側溝に手を伸ばして、ノンノの前足を掴んで、引っ張り出しました。
泥だらけのノンノが現れました。
抱き抱えて、走りながら工房に連れていく時、僕は朝からの不安と緊張感から解放されたのか、この時が一番感情が高まって、泣き叫びながら工房に入って行きました。
とにかく水を飲ませようと、ボウルに水を入れて口元に持っていくと、最初は衰弱していて、飲まなかったのですが、とにかく安心させてあげようと、強く抱きしめたり、強めに撫でてあげたりしたら、ゆっくり立ち上がって、フラフラしながらも水を飲み始めました。喉乾いてたんでしょうね。がぶ飲み。
お腹も空いているかと思い、僕のお弁当用に昨夜作った鶏の唐揚げをあげたら、すごい食いつきで全部平らげました。
そしていつものように、ヨロヨロしながら、何事もなかったかのように、工房の廊下を徘徊し始めました。
それはいつもの光景。
いつもと違っているところは、ノンノが泥だらけだということ。
そして、ノンノの歩く一歩一歩に、可愛いドロの足跡がついていること。
すごいですよね。
19歳の老犬が、10時間も狭いところに身動きも取れない状態で閉じ込められていたのに、いつものように歩いてる。
家に連れて帰って、シャワーできれいにしてあげました。
やっと僕もホッとして、ノンノの足取りを振り返ってみました。
ノンノを放して、ノンノが見えなくなった後、道路脇にノンノはウンチをして、ウンチをすると、ちょっと興奮するのか、身軽になるのか、動きが活発になるので、その勢いで、土手の方に行ってしまい、土手を転がり落ちて、そのまま側溝に落ちてしまった。
たまたま学校の方を向いて落ちたので、そのまま側溝の中を学校の方面に歩いたんでしょう。
土手下の側溝の中だったので、まると散歩している僕とすれ違っても気づかない。
ノンノがいた場所は、ウンチの場所から300mくらい。
その間にトンネルになっているところが3ヶ所あって、そこも通り抜けて、ノンノがいたトンネルは、20mくらいの長いトンネル。
そのトンネルを抜けるともう少しで、大きな用水路につながっていて、そこは水深30センチほどの水が勢いよく流れているので、もしノンノが挟まった箇所に土がなくて、ノンノが通れたら、とっくに用水路に落ちて流されていたと思います。
もしノンノが挟まった場所がトンネルの出口に近いところじゃなくて、真ん中の方だったら、鳴き声が聞こえて、中にいることが解っていても、どうにもできなかった。
僕がここを歩いたのがこの時間じゃなくて、もっと早い時間だったら、亜麻祭りの雑踏や音楽で、微かなノンノの鳴き声に気づけなかった。
僕が歩いていたところが、ちょうどノンノのいたトンネルの反対側の出口付近じゃなかったら、トンネルの中を反響したか弱いノンノの鳴き声は聞こえなかった。
考えてみると、いろんな奇跡が重なって、ノンノを見つけることが出来たんだと思いました。
やっぱりノンノは奇跡の犬。
久しぶりにシャンプーをして、良い匂いのノンノを抱っこしながら、
「ノンノ、ごめんね。ノンノの生きようとする力に救われたよ。あのまま見つけられずにお別れしてたら、悔やんでも悔やみきれなかった。ありがとね。これからは美味しいご飯、作るからね。いっぱい食べてね。ノンノは生きようとしたんだね。すごいねノンノ。本当にすごい!」っと伝えました。
シャワーで濡れた体が乾いてないので、ブルブルっとして、僕の顔に水しぶきが飛んで、僕もびしょ濡れ。
「うわ〜、やめて〜!!」
こんなやりとりがたまらなく嬉しい。
その晩。
ノンノも疲れているだろうから、今夜はきっと朝まで熟睡するぞ。僕も10時間、ご飯も食べず探し回ったので、(スマホに入れてる万歩計を見たら、4万歩だった!)、久しぶりに朝まで寝れるぞっと思っていたら、これまたいつものように、夜中の2時と4時にノンノの徘徊が始まって、起こされて、いつものように外に連れて行きました。
「おかしいなあ。さすがに今日はノンノも疲れているはずなんだけどなあ」
満点の星空を眺めながら、ふと思いました。
10時間、狭いトンネルの中に閉じ込められて、苦しい思いをしていたと思っていたけど、もしかして…
「ノンノ、いつものように、普通に寝てたの?」
それはそれで、奇跡の犬だ!





