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覚悟の重さ

今日の納品は、気持ちが重かったんですよね。
室蘭のお客様の家に、サイドボードを届けに行って来ました。
どれくらい前だろう?10年くらい前かな?
ロッキングチェアーの納品の時、バードウォッチングが趣味だというIさんご主人が、地球岬をクルージングしながら、海鳥の撮影をするというので、同行させてもらったことがありました。
2ヶ月くらい前に、SNSで、ある投稿をしました。
「運送会社が破損させてしまって、作り直した家具のパーツを使って、アウトレットの家具を製作します」っと。
この投稿にIさんがリアクションして下さり、サイドボードを製作することになったんですね。
「旅する木さんの二つ目の作品を我が家にお迎え出来るなんて、とても嬉しい」っと、お電話でも喜んでくれていました。
僕のブログも毎回とても楽しみにしてくれていて、ちょうど電話で打ち合わせしている時にアップしたブログの文章を褒めて下さり、「この後5,6回は読みますよ。須田さんの文章は、何回でも読めます」っとおっしゃってくれました。
ちょうど製作も終盤に差し掛かった頃、Iさんの奥様から電話を頂きました。
「夫が須田さんに家具を頼んでいると思うのですが、どうなっていますか?」っと。
「ちょうど今、まさに製作していて、8割がた完成していますよ。もうすぐ完成です!」っとお伝えすると、「そうですか!」っと喜んでくれた後、
「実は先日、夫が亡くなりました。4年前から病気を患っておりまして…
須田さんの家具をとても楽しみにしていました…」
言葉を失いました。全く知らなかったし、電話の声は、とても元気だったので。
事情が事情なだけに、キャンセルの連絡だと思ったのですが、「夫は本当に旅する木のファンで、楽しみにしていたので、そのまま納品してもらって、その家具の上に置く、小さなお仏壇を須田さんに作ってもらったら、きっと夫はとても喜ぶと思います」っとおっしゃってくれたのです。
それで今日、室蘭のIさんの家に、サイドボードをお届けして、お仏壇の打ち合わせをしに行ってきたのです。
リビングに家具を搬入するや、奥様が「素晴らしい!本当に素晴らしいです。嬉しい」っと、叫ばんばかりに喜んでくれました。
自然や木が好きで、木製品がたくさんあるIさん家のリビングの中心に、10年前に納めたロッキングチェアーが置かれていました。
ご主人がネットで一枚の耳付きの板を購入されていて、奥様がそれをどう使ったら良いものかわからなくて、「よかったら須田さんが使ってください」っと渡されました。
とても他の家具で使うわけにはいかないので、Iさんのお仏壇で使おうと思いました。
お電話での感じや、僕の中のIさんご主人のイメージから何となくこんなお仏壇っと思っていたものとは対極にあるような一枚板だったので、なかなかアイデアが湧かず、困っていました。
出してくださったお茶を飲みながら、奥様が語るご主人のこと、思い出などを聞いているうちに、その板の使い方が閃いて、実際にそのように置いて見てみると、とても雰囲気が良く、奥様も「うわ〜、これですね!これが一番しっくり来ました」っと言ってくれて、方向性が決まりました。
「サイドボード、きっと使いたかったと思います。きっとその辺にいて見てますね」なんておっしゃりながら、毎日お手入れをしていたという庭を見た時、 一匹の蝶々が窓の近くに飛んで来ました。
もうすっかり寒くなった北海道のこの時期、蝶々が飛んでいるなんて、珍しいと思います。
しかも、窓ぎわ付近をずっとひらひらと舞っているんです。
「ほらね、きっと、俺の仏壇、どんな風になるんやろ?なんて見に来たんですよ」っと。
その庭を眺めるように置かれているロッキングチェアーには、ご主人が使っていたと思われる、ブランケットがかかっていました。
「夫は須田さんが作ったこの椅子をとても気に入っていて、毎日座っては外を眺めたり、居眠りしていたんですよ」っと教えてくれました。
リビングの後ろから、ロッキングチェアーの背中を通して窓越しに見える庭の風景が本当に美しくて、この椅子に座って、夫婦でのんびりと外を眺めながら過ごした時間を想像しました。
奥様は、時々涙ぐみながらも、終始明るく、ご主人のお話をしていました。
毎日庭のお手入れをしていたこと、庭にやってきた鳥を撮影していたこと、9月には美唄にマガンの撮影に行こうとしていたこと、その帰りに旅する木に寄って行こうと話していたこと。
そんな話しを聞きながら、思いました。
その人の大切な心の風景の中に、そっとあるような家具を作っていこう。
それが旅する木のすべきことであり、進むべき道なんだと思いました。
室蘭に来る時に感じていた心の重さは、依然として重いままだけど、重苦しいというものではなく、重さのある覚悟に変わりました。
帰る時、「とっても楽しみです!」っと叫ばんばかりにおっしゃった奥様の大きな声に、これからの人生の希望を見つけていこうとする決心のようなものを感じました。
その決心をそっと支えるような、そんなお仏壇を作ろうと思います。
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実は上の文章は、納品した日のInstagramに投稿したものなのです。
Iさん奥様が旅する木のInstagramを見ているとは知らなかったのですが、次の日、お仏壇に乗せる物一覧を教えてくれるメールに、こんなことを書いてくれていました。
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須田様
室蘭のIです。
先日は素敵なサイドボードを作っていただきありがとうございました。
入れたかったものはすべて入りました。
昨日のインスタもとても嬉しかったです。
こんなに思いながら作って下さるんだ、私も夫もなんて幸せなんだろう、と何度も読み返しました。
お仏壇も楽しみです。楽しみと書くのは良いのかどうかわかりませんが、須田さんが作って下さるお仏壇は、きっと夫を身近に感じることができそうな気がしているからだと思っております。
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旅する木は下請け、卸をしない。
お客様に直接届けて、喜んでいる笑顔が見たい。
その一心で、家具作りをしています。
受注の安定や、売り上げの向上を考えると、もちろん、ショップに卸す、いくつかの元請けを作って、仕事を取ってもらうっというやり方の方が、賢いやり方なんです。
でも、それだったら、このような関係で、このような距離感で、このような気持ちで、このような思いを背負った家具作りは出来ません。
「お仏壇も楽しみです。きっと夫を身近に感じることができそうな気がしているから」
やっぱり僕は、こういう重さを背負って、お客様と正面から向き合って、家具を作っていきたいと思いました。
Iさん奥様、期待していてくださいね。





