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僕、タバコ吸ってました
今、もうすぐ新発売される積丹ジンを入れる木箱を作っています。
限定で100個だけ、箱に入った状態での販売になるそうです。
ちょっと凝っていて、蓋を利用して、こんな風にジンのボトルがバランスよく立つように設計しました。
↑↑↑ 全部飲んでしまったので、ボトルの中身は水です…(涙)
積丹ジンを製造・販売している積丹スピリットの社長の岩井君とは、20年ほど前に『木育』を広める活動をしていく中で知り合いました。
まだ彼が道職員だった頃なのですが、当時から、これほど頭の切れる男は見たことがない。凄い人だ。と思っていました。
岩井君が積丹スピリットを立ち上げて、こんな形でまた一緒に仕事ができることを嬉しく思います。
この木箱のプロジェクトは、JTの助成金を利用して、積丹にある『JTの森』から切り出された木を使って作るというもの。JTは自然環境保全の一環として、森林保全活動もしているんですね。
正直な話、ついつい
”タバコ=健康を害する” → ”JT=なんかイメージ悪い”
という構図が生まれがちですが、そんなイメージを払拭するような活動を全国でしているんですね。
素晴らしいと思います。
ある程度完成してきた木箱を、先日、JTの方が工房見学を兼ねて、見に来てくれました。
ずら〜と並んだ木箱をご覧になって、とても喜んでくれて、嬉しくなりました。
昨今、喫煙者にはきつい時代ですね。
10月にまたタバコが値上げされて、一箱500円〜600円なんですって。
ビックリしました。
僕がタバコを吸っていた頃は、250円だったので。
学生時代、先輩がタバコを吸ってる姿ってカッコいいな。なんて思って(笑)。
多い時で、1日二箱くらい吸ってました。
タバコと言えば、思い出がありまして。
学生時代、僕は一年大学を休学して、カナダに遊びに行ってるんです。
留学とかじゃなくて、本当に遊びに行った…。
ん〜、遊びでもないんですけどね。
倉本聰脚本のドラマ『ライスカレー』が大好きで、そのドラマに触発されて、カナダに行って、ログハウスを建てる勉強をしよう!なんて思ったんです。
ドラマに出てくる若かりし頃の時任三郎、陣内孝則演じるケンとアキラ。
二郎(北島三郎)の「お前らの青春をカナダにぶつけろ!カナダでライスカレー屋をやる!」という言葉を信じ、英語も何も解らないままカナダに行くのですが、空港で待っているはずの二郎は来ない。
言葉が通じない見知らぬ国に置き去りにされた二人は、紆余曲折を経て、ログハウスを建てる仕事に就くのです。
時には現実に打ちのめされ、さまざまな出来事に翻弄されながらも、ケンとアキラは異国の地でそれぞれが思い描く夢に向かって奮闘する人間模様を描いたドラマです。
最後のシーンがいいんです。
丸太の事故で片耳の聞こえないケン(時任三郎)を探して、元恋人のリス(藤谷美和子)が日本から追いかけて来て、やっとケンを見つけます。
雪の中を転びながら駆けてくるリスの腕を抱えたケンに、「事故にあったのはどっちの耳?」と尋ねるリス。
その耳元で、涙をこらえながら言います。「ずっとケンのこと、考えてた。」
「…そっちが(そっちの耳)ダメだんだよ。」というケンに、やっぱり聞こえない方の耳元で「…いいの!」と言って泣き崩れます。
雪上の二人からカメラが上空にず〜っと引いていって、雪原に浮かぶカナダのスプルースの森が美しいんです。
このシーン、何度見たことか(笑)。
寂しい一人暮らしのアパートで、僕は感動で涙しながら、「俺も行くよ〜。カナダ〜。」なんて言いながら、ティッシュで涙を拭いていましたね(笑)。
ドラマの中で、ケンが言います。
「別にライスカレーじゃなくたってよかったんだ。夢中になれるものが欲しかったんだ。」
今考えると、ドラマに触発されて、大学を休学して、ログハウスを建てにカナダに行こうだなんて(驚)。よく行ったものだと思います。
特に将来の目的もなく、理系の科目が得意だからというだけで、自分が行けるレベルの大学を選び、通っていた僕は、内側から溢れる熱いものをぶつけるものがなく、悶々とした日々の中で、ケンと同じように、夢中になれるものを探していたんですね。
なんだってよかったんだと思います。
最初の3ヶ月はバンクーバーの語学学校に通っていたんですね。当時、バンクーバーの英語学校は、7,8割が日本人なんです。
元々の目的が、英語を身につけるための留学じゃないし、外国に住みたい!ということでもないし、日本人でつるんでてもしょうがないし…
といことで、英語学校をサボっては、フラフラとバンクーバの街をぶらついていました。
よく時間潰しに、バンクーバー美術館の前の階段に座って本を読んでいたものです。
ここは渋谷のハチ公前みたいに、待ち合わせの場所だったんでしょうね。
たくさんの若者たちがたむろする場所で、一日中本を読んだり、音楽を聞いたり、人間ウォッチングしたりしていました。
ここでよくタバコも吸っていました。吸っていたのは、マルボロのメンソール。
カナダには売ってないので、わざわざアメリカのシアトルに行って、たくさん買ってきたりしましたね。
どういうわけか、ここで僕はいろんな男性に声をかけられるのです。
隣に座って来て、なにか言ってくる。
ここ、タバコ吸っちゃいけないのかな?なんて思ったんだけど、そんな雰囲気でもない。
日本人が珍しいわけでもないし。
そうか、俺が未成年に見えるから、未成年がタバコ吸ってるように見えて、なにか言ってるのかな?なんて思ったり、タバコが欲しいのかな?って思って、一本あげたり、それでもしつこく喋ってくる人には、流暢な英語で
「I’m sorry.I can’t speak English.」
って言ったりしてました(笑)。
しばらくして、原因がわかりました。
実は、公共のスペースで、メンソールのタバコを吸っているのは、
「私はゲイですよ。」というアピールなんだそう。
ビックリですよね!
「僕はゲイです。よかったら誘ってください。」
ってアピールしてたんですから。
あっぶね〜!!!
こんなぐだぐだしていてもしょうがない。
やっと自分を奮い立たせ、ログハウスを建てる仕事を探しに、グレイハウンドのバスに乗って、北へ北へ向かいました。
そもそもログハウスを建てた経験もない、英語もろくに話せない、住むところもない、どこの馬の骨が解らない日本人の僕に宛てがわれる仕事など見つかるわけもなく、グレイハウンドのバスがたまたま止まった町が、なんか雰囲気が良さそうだったら降りて仕事を探す。なんて旅をしていました。
バスを降りて、荷物を降ろして、バスの後ろ姿を見送って、ため息をついて、最初にすることは…。
とりあえず一服。
誰もいないことを確認して、こっそりとマルボロのメンソールを一本取り出して、カナダの空に向かって煙を吐き出す。
さて、どこに泊まろう。
やっと安い宿を見つけて、次の日マンパワー(職業安定所)に行って、つたない英語で「ログハウスを建てる仕事を探している。」なんて言って紹介してもらうんだけど、取り合ってもらえない。
はるばる極北の田舎町に、日本人の若者がログハウスの仕事を探しに来るなんて珍しいと嬉しかったのか、それとも僕の悲壮感が半端なかったのか(笑)、わずかながらお小遣いをくれたりして帰された時、なんとも言えない淋しい気持ちで橋から川を眺めると、ビーバーがせっせと川を堰き止めて、家を作ってる。
他にすることも思いつかず、じ〜っとその様子を見ながらタバコを取り出して、ため息とともに煙を吐き出す。
明日はどこの町に行こうか。
気持ちが晴れたことなど、一度もなかったですね。
ただ、口に広がるメンソールの爽やかなハッカの香りが、少し僕の気持ちを前向きにしてくれていたような気がする。
日本に帰って来てすぐにタバコは止めたので、もう30年も吸っていない。
今ではかつて自分がタバコを吸っていたことすら思い出すことがない。
この木箱に入れる新発売のジンは、積丹のハーブを蒸留したもの。
ボトルのコルクを抜いて、鼻を近づけると、心地の良いハーブの香りがするんだろうな。
発売が楽しみです!
ちょうどさっき、岩井君が工房に完成したばかりの木箱を取りに来て、新発売のジンのボトルに貼るラベルを見せてもらいました。
夜の海の見えるおしゃれなバーに、彼女と二人で水平線からこっちに向かってくる月光の筋(月の道)を眺めながら、ジンを頼む。
バーテンダーが木箱からボトルを取り出して、二つのグラスにジンを注いだ後、僕たちの目の前でボトルを木箱の蓋の穴に差し込んでたたせて見せる。
得意そうなバーテンダーに、にっこり微笑んで驚くフリ。
バーテンダーが去った後、彼女が僕にこっそり言う。
「あなたが作ったんでしょ?」
「し〜。そうだけど、いいの。」
グラスを鼻に近づけて、ハーブの香りを嗅ぐ。
僕はバーテンダーに言う。
「すみません。マルボロのメンソール、ありますか?」
「え?タバコ吸うの?」驚く彼女。
「なんかね、そんな気分。」
持って来てくれるバーテンダー。
一本取り出す。
バーテンダーが気を利かせて、火をつけたライターにを近づけてくれる。
「あ、大丈夫です。吸わないから。」
取り出したタバコの匂いを嗅ぐ。
ハッカの香り。
「ほら、メンソールだから、ハッカの香りがするんだよ。」
「ふ〜ん。」
「昔、学生時代さ、あるドラマに影響されて、ログハウスを建てにカナダに行ったんだ。その時さ…」
海に映る月の道を眺めながら、楽しそうに話をしている二人。
な〜んてことを想像してしまうくらいオシャレなボトルラベルでした(笑)。
って、結局想像の中でもタバコは吸わないのかい!
愛しています