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天野ハナさんとの運命の出会い
♪あなたに会えて ほんとうによかった
嬉しくて 嬉しくて 言葉にできない♫
僕の世代はすぐにわかりますよね。オフコースの『言葉にできない』
まあ、この歌は切ない歌ですが、これから書こうとしている、僕の奇跡のような出会いは、喜びで溢れています。
って、誰と出会って、そんなにはしゃいでるのか?って。
いや〜、どうしようかな〜。
あまりに美しくて、可愛くて、可憐な娘なので、内緒にしておきたいんだけど、言っちゃおうかな〜。
よし!言いますよ。
その娘の苗字は〜?
ジャカジャーン!
「天野さんです」
天野さん?
名前は〜?
ジャカジャーン!
「ハナさんです!」
ん?
天野ハナ?
誰それ?
「天野ハナ! え?知らないの? 天野ハナ。」
だから、誰それ!
あ〜、鈍い!も〜、鈍いんだから!
マジで?
ヤバくない?その鈍さ。
「天野ハナ → あまのはな → 亜麻の花」
…
「はい。すみませんでした!」
工房のある当別町東裏は日本一の亜麻の産地なんです。
今、まさに毎朝近くの亜麻畑は満開の亜麻の花が見頃です。上の写真はアップで撮ったのですが、実際には1センチにも満たない可愛らしくて可憐な花です。
昔、1960年代、繊維を採るために北海道では盛んに栽培されていた亜麻ですが、化学繊維に競争で負けて衰退、1980年代には絶滅したんですって。
ところが、亜麻にはω3脂肪酸、αリノレン酸という栄養素の高い油が豊富に含まれているということで、繊維ではなく、サプリメント(亜麻仁油)として栽培が復活されたんです。
サプリメントなので、無農薬で栽培されており、農家さんは手をかけて育てているんですね。
この亜麻仁油、実は木と相性がとてもいいのです。
家具の塗装で、『オイル塗装』って聞いたことあると思います。市販の家具塗装用のオイルのほとんどが主成分は亜麻仁油なんですね。
ところが、亜麻仁油はなかなか乾かない。一週間経っても乾かない。
普通、家具屋さんは塗装が終わったらすぐに出荷したいですからね。それで市販のオイルには乾燥促進剤が入ってるんです。それが有害物質を出すんです。
でも、他に選択肢がないので、多くの家具屋さんが市販のオイルを使っていて、僕も工房を移転するまで使っていました。
ところが、工房を今の東裏小学校に移転したら、当別の、しかもまさにここ、東裏地区が亜麻の産地だというではないですか!
しかも無農薬で栽培されていて、サプリメントとして種を絞って亜麻仁油を抽出していると。さらに、搾りカスの有効利用を模索している。ということだったのです。
早速絞りカスを実験的に木に塗ってみると、黄金色の亜麻仁油は、とっても木の質感に深みを出してくれて、いいんです!
でも…
ほんと、乾かない。
一週間経ってもジワジワ染み出してくるんです。
でも、幸い工房には家具を保管する空き教室もあるし、旅する木は100%オーダーで家具を作っているので、乾かなければ、乾くまで待ってもらえばいいんじゃないか。と言うことで、地元で採れた亜麻仁油を家具の塗装に使うことにしたのです。
だから、旅する木のオイルは、自信を持って”世界一安全なオイル”と言えるのです。
もちろん、ここが ”天野さん家”だと、
いや、もとい、”亜麻の産地”だと知っていて来たわけではないんです。
全くの偶然。奇跡のような出会いだったんです。
僕にとって、丁寧に、安全な家具を作っていくという、旅する木の指針となるような、大きな大きな出会いだったんですね。
導かれたとしか思えない、とても嬉しい出会いだったんです。
そして、毎年7月には写真のような、可愛くて、可憐が花が咲きます。
亜麻の花は、日の出と共に咲いて、お昼くらいに全部、一つも残らず全部散ってしまうのです。午後になると、亜麻畑を目の前にして、「亜麻畑はどこですか?」ってくらいに。
そして翌朝、また日の出と共に、一斉に咲き始めるのです。
昨日、亜麻の花が咲く様子を見ようと早起きして、朝4時過ぎに自転車で亜麻畑に行ってみました。
遥か向こうまで続いている一面まだ緑色の亜麻畑のその向こう側から、日が昇り始めます。一点の光が、みるみる間に丸くなって、僕の目を焼き付けます。不思議なことに、日が昇るまでは風もなく、時間が止まったかのような亜麻畑だったのですが、日の出とともに、サラサラっと風が吹いて亜麻畑が揺れ始めます。眠っていた亜麻の花を揺り起こすよう。
日の出を見つめていた強烈な光に、ちょっとたじろいで、しばらく目を瞑ってからそっと目を開けると…
一面緑の中に、ポツリポツリと淡い紫の可愛らしい花びらが、そっと咲いています。
そうか。眠っていたんじゃなくて、ほんのわずかな、ささやかで華やかな時間を心待ちにしていたんだ。なんて思うと、愛おしい気持ちになります。
ほんの数時間、その美しい姿を見せた後、その美しさのまま散っていき、翌朝、生まれ変わったようにまた、新しい美しさを見せてくれるのです。
亜麻の花は、ほんとに、健気で、可愛らしく、可憐な花なんですよね。
そしてなにより、毎日新鮮で歳を取らない。
最高じゃないですか?
あ、もしかして僕今、地雷踏みました?
いえ、決してその〜、他意はなく…
花はあれですけど、人は歳を重ねるごとに、深みが増すっていうか、
特に女性は強くなるっていうか〜。
ああ、強くなるっていうのは、その、いい意味で…
…すみません。
花のことを伝えようとしただけなのに
♪難しくて 難しくて 言葉にできない♫