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神様はおばあちゃん♪
『美しい木の歩行器』が完成して、先日、納品してきました。
注文をくれたのは、91歳のあばあちゃん。
「テレビであなたが作った木の車椅子を見てね。あんな綺麗な木の歩行器を作って欲しいの。その歩行器で、この辺を散歩したいわ。」
実は、『美しい木の車椅子』と同じようなレベル、テイストで、しかも、作ったことのない歩行器を一台だけ作るなんて、割りに合うわけないんです。
↑↑↑ 旅する木の『美しい木の車椅子』↑↑↑
写真をクリックすると、詳細へ
だって、世の中にそんなものがないんですから。
世の中にないものを、ゼロから設計して、製作する。
しかも、回転しているタイヤを止めるブレーキも、木のホイールに合わせなきゃならないので、ゼロからオリジナルのものを設計して、金物の図面を描いて、全ての金物パーツを金物屋さんに特注で作ってもらって…
なんてことを考えたら、
「これはとんでもない時間と労力がかかる。そして、そこまでしてうまくいくか判らない。んん、断ろう。どうやって悪い気持ちにさせずに断ろうか?」
なんてことを、話を聞きながら、頭の中で考えていました。
そんな僕におばあちゃんが言います。
「私、普通なのは嫌なの。」
”わたし、ふつうなのはいやなの。”
この言葉を聞いた瞬間、僕の心は、グルンッと180°、その向きを変えます。
”やろう!”
それからリサイクルショップ で中古の歩行器を買ってきて、それを眺めながら、苦悩の数ヶ月を過ごすことになります。
これは金属だから、溶接だから、プラスチックだから、メーカーだから、大量生産だから…
”できる”
ということばかり。
何度、頭を抱えては、作業台の上で転がりながら、
「あ〜、頭がパンクする〜。なんで家具職人の俺が、ブレーキのシステム開発をしなきゃならないんだ〜!」
なんて叫んだことか。
作業台の上でひと暴れすると、心が落ち着いてくるのです。
ぼんやりと高い体育館の天井を見ながら、
「思えば12年前に車椅子の試作を始めた時から、幾度となく、こんなことを繰り返してきたな〜。いったい俺はどこに向かってるんだろう?神様は俺をどこに運んでいくんだろう?…ま、悪いようにはしないでしょ!がんば!俺!」
なんて自分を励まして、ごまかして?(笑)、また設計に取り掛かります。
ブレーキシステムの設計を試行錯誤しながら検討していると、おばあちゃんの、甲高いあの声が脳裏をよぎります。
「私、普通なのは嫌なの。」
僕も普通が嫌だから、『美しい木の車椅子』を作ろう!なんて思ったんですよね。
そしてそれを見た、普通が嫌なおばあちゃんが、普通ではない『美しい木の歩行器』を使いたい!って思ってくれて、今こうして、僕に作らせてくれてる。
そして僕は閃くのです。
ああそうか!あのおばあちゃんは僕の望みを叶えてくれる神様なんだ!
”いったい俺はどこに向かってるんだろう?”
そんなことは天に任せて、僕は目の前の”普通ではない”を”普通”にしていこう。
あれから4ヶ月。
今、僕がひと暴れした作業台には、完成した『美しい木の歩行器』が乗っている。
それを眺めながら僕は思うのです。
こんな木の車椅子や、木の歩行器が、街中を歩いていたら普通に見られる心の豊な世界。
そんな世界、今は”普通じゃない”と思うけど、それを”普通”にしていきたい。
明日、10月13日の夕方6時10分からのNHK『ほっとニュース北海道』の中の生放送で、『美しい木の車椅子』と『美しい木の歩行器』が紹介されます。
お時間のある方、よかったらご覧ください。
↑↑↑ 画像をクリックすると、YouTubeで、木の歩行器の組み立て風景をご覧になれます。美しい音もお楽しみください♫
僕の持論
「いい職人は、いい音を出す」
今、”普通じゃない”を”普通”にしていこう。愛してる。