”魔”〜アイデアを形にする人とは? | 札幌のオーダー家具・オーダーキッチンなら家具工房【旅する木】

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”魔”〜アイデアを形にする人とは?

アイデアが単なるアイデアで終わる人と、具体的な形にする人のちがいは…?

工房の近くの神社では、今、桜が満開です。
本州にお住まいの人からしたら、「今ごろ桜?」って感じですよね。

 

先日アップしましたが、【美しい木の車椅子】『宙号』が完成しました。
宙君という高校生の男の子にオーダーで製作した車椅子。

↑『宙号』

初号機から見たら、デザインも機能も、格段に進化しています。
初号機が完成した時は、カッコイイな〜!と思ったのですが、今見てみると、欠陥だらけの骨董品という感じですね(笑)。
愛嬌があって、好きですが…。

 

↓『初号機』(初号機製作前に、1/5の模型も作りました!模型、可愛い♪)

振り返ると車椅子の構想は、2009年からスタートしてるんですね。
アイデアで言うと、実は操業前に使っていたスケッチブックまで遡ります。

旅する木を立ち上げる際に、金融機関からお金を借りなきゃいけない。
アパート暮らしの僕には担保になるような財産など何もない。
保証人になってくれる人もいない。

担保なし、保証人なしで、「家具工房を立ち上げたい。お金貸してください。」なんて言って金融機関を回ってみたところで、門前払い。
唯一、国民金融公庫(現在の日本政策金融公庫)で、担保なし、保証人なしで満額1000万円の融資枠があり、それが望みの綱でした。

何を見るかと言うと、僕自身と、事業計画書。
僕自身というところは…
まあ、精一杯、好印象を持ってもらえるように、誠実な好青年を演じましたかね〜?(笑)

事業計画書にかけるしかない!
と言うことで、当時使っていたスケッチブックに、僕にしかできないもの、ことなどを、とにかく思いつくままに100個くらい書き連ねたんですね。

そんな中の30番目くらいに、
『美しい木の車椅子』
なんて文字が書かれたんです。

なんで思いついたのか?
解りません。
なんとなく…
なんでしょうね。

そんな順位なものですから、提出した事業計画書に載せるTop5には入るはずがなく、そのまま古いスケッチブックのどこか1ページの中で、健気に出番を待ってたんでしょう。

創業して5年が経ち、事業計画書に選ばれた5項目がだいたい形になって、さて、次なにしようか?と思った時。
小声で、はにかみながら「30番、美しい木の車椅子、ここにいるよ〜。」
なんて感じで出てきたんです。

積極的に、俺が!私が!的な感じが僕は好きじゃなく、どちらかと言うと、いや、絶対的に、健気で、おしとやかで、可愛げがある女性がタイプなので…

っと、そうじゃない。そういうことを言おうとしたわけではないです。

今振り返ると、このスケッチブックに書かれた『美しい木の車椅子』、なかなかの曲者で、僕が想像するに、女性から嫌われるタイプの女性なんでしょうね。

美しい木の車椅子 「私なんて無理ですよね〜。ちょっと難しいですよね〜。」
なんて言われると、
僕(須田) 「いや、できるんじゃない?。」
美しい木の車椅子 「ちょっと無理だと思いますよ。」
僕 「できると思うよ。」
美しい木の車椅子 「そんな無理しなくていいです。できるって言ってくれただけで、嬉しいです。」
僕 「大丈夫。きっとできるよ。俺、頑張るから。」
美しい木の車椅子 「本当ですか?嬉しいです。応援しています♪」

なんて感じで、女性から見たら、
「バカな男だね〜。まんまと引っかかって。」
って感じなんでしょうけど、『美しい木の車椅子』にはまっていくわけです。

最初僕は、結構簡単に、「車椅子なんて、椅子に車輪があるだけじゃん。」
なんて思っていたのですが、いざ試作を始めると…
この世界に足を踏み入れたことを後悔しました。

・木がこんなに曲がるわけないじゃん!絶対無理!
・今まで家具作りで身につけてきた技術では足元にも及ばないじゃん!
・金属だから強度が出せるわけで、そもそも木で作ることなんて想定されていないじゃん!
・中途半端に適当なものを作って、もし事故が発生したら、全てを失うことになるじゃん!
・ある程度、医療的な知識もなきゃだめじゃん!
・…じゃん!じゃん、じゃん、じゃん!

でも、オリンパスでのカメラの開発時代(最初の就職先)の上司でめちゃくちゃ怖い人がいて、できない言い訳をしようもんなら、
「できねー言い訳すんじゃねえ!できねー言い訳100個考えんだったら、できる理由を1個見つけろ!このモヤシヤロー!」
なんて怒鳴られながら、毎晩日付が変わるまで、対策と実験を繰り返していた僕は、簡単に、
「できません。」
と言わないクセがついちゃったんです。

それから2年をかけて一つ一つのパーツの試作を重ねました。
一番の難関は?
なんと言っても前車輪を支えるフレームですね。

ここは、ちょっとした段差を乗り越える時、ガツンと衝撃がかかるので、どんな強固な仕口(組み木)でもいずれ壊れてしまう。
やるとしたら曲木しかない。
でも、木がこんなに曲がるわけがない。

いろんな人に相談しても、可能性が見出せない。
「金属で作って、表面に木を貼ればいいんじゃない?」
「ここは金属でいいんじゃない?他が木なんだから。」

でも僕はそういうのは嫌なんです。

この曲木ができなかったら、木の車椅子は諦めよう。
そう決めて試行錯誤の実験を繰り返し、とうとう曲げたんですね。

「木の車椅子、いける!」
と確信した瞬間でした。

美しい木の車椅子の試作を進める中で、やっぱり医学的な知識が必要なんですね。
僕にそんな知識があるはずがない。
今から医療の勉強をするのは現実的じゃない。

だとしたら、すごく遠回りかもしれないけど、実際に車椅子を使っているいろんな障害を持った車椅子ユーザーにピッタリ合う車椅子を何台も作って、そうして医学的知識や、ノウハウを培おう!と思って、SNSで試作に協力してくださる車椅子ユーザーさんを募集したんですね。

「あくまで無償でかつ試作なので、何かあっても責任持てません。使ってもらって、不具合や使い勝手が悪いところを洗い出して、フィードバックしてもらって、次の試作に活かしたい。」っと。
2017年、今からもう4年も前のことです。

そんなことで応募してくれて、試作の順番を待っていてくれた宙君の車椅子が完成したんですね。
かれこれ試作7台目なので、だいぶデザイン、強度、機能が高いレベルで融合したものになったのではないかと思って…

いたのですが…

宙君、いろんなことを想定して乗ってくれて、早速不具合を見つけてくれて、今、宙号は工房に戻ってきて改善の検討をしているところです。

こうやってどんどん進化していって、自信を持って世の中に出せると僕が確信できる段階になったら、いよいよ販売をしていこうと思っています。

文頭の言葉。

「アイデアが単なるアイデアで終わる人と、具体的な形にする人のちがいは、
『魔』でしょうね。情熱と言ってもいいし狂気と言ってもいい。何かをやるなら『魔』と言われるくらいに繰り返せ、ということです。」

小説家・城山三郎氏の言葉だそうです。
毎朝届くメルマガに載っていた言葉で、僕の心に刺さった言葉です。

僕が『魔』の領域に入っているかどうか?と問われたら、まだまだだですね。
10年もかかって、まだ試作の状態ですから。
でも、試作機が完成する度に、「今、死んでもいい。」と思えるもの作りをしていることは、幸せなことだなぁ。と思います。

僕の理想は、

朝、スタッフが工房に出勤して、僕の事務所のドアを開けた時、机の上に完成したばかりの車椅子が乗っていて。

スタッフ 「お〜、新作の車椅子、完成したんっすね!」
触ろうと思って部屋に入ってくる。

音楽  in 『ありがとうのうた』 Makicom Minami  → 3分45秒くらいより

車椅子を撫でながら
スタッフ 「お〜、カッケ〜!ここの足乗せの可動のとことか、サイコー!」
床にあぐらをかいて腕組みして、うつむいている僕を見つけて。
スタッフ 「お〜、ビックリした!須田さん、いたんですね。」
僕 「…」
スタッフ 「新作の車椅子、いいっすね〜。」
僕 「…」
スタッフ 「須田さん?」
僕 「…」
スタッフ 「寝てんだ。また新作の車椅子を眺めながら、お酒飲んでたんですね。至福の時だ〜。なんて言って。」
僕 「…」
僕の横に日本酒(国稀の大吟醸)の一升瓶と倒れているグラス。
スタッフ 「あらら〜、須田さん、お酒ごぼしてるじゃないっすか。」
僕 「…」
スタッフ 「須田さん?」
僕 「…」
スタッフ 「マジかよ。も〜、今フキン持ってきますから。」
そっと出ていくスタッフ。

カメラ、国稀の一升瓶と倒れているグラス。床にこぼれているお酒。
うつむいている僕の顔。穏やかに目を閉じている。少し微笑んでいるかのような口元。

カメラ、頭上に引きながら。
真上からの車椅子と僕。

カメラ、天井をすり抜けて上空に。
長〜い赤い屋根の工房と一面タンポポが咲いているグラウンド。
スタッフの声 「須田さん?…ちょっとどいてくださいよ。…須田さんってば〜。もう、須田さん?」

カメラ、さらに上空へ。
工房の周りの水を張りはじめた田んぼ、キラキラ光っている。
冬蒔きの青々とした小麦畑に風が吹く。美しい曲線の波がドミノ倒しのように向からやってきて、遥彼方に消えていく。

カメラ、さらに上空へ。
向こうから白い点の群れが近づいてくる。
近づいてくる白い鳥たち。
鳩の群れ。
太陽の中に消えていく。

カメラ、さらにどんどん上空へ。
広い大地
北海道

日本
アジア

カメラ、やがて成層圏へ。
青白い光に包まれた丸い地球。
ゆっくりと流れている白い雲。

やがて大気圏へ。
暗闇の中に浮かぶ青く丸い地球。

小さくなっていく地球。
どんどん小さくなっていく。

やがて遥か彼方に消えていく。

真っ暗な宇宙。

静かに音楽だけが流れている。

The  End

 

やっべー。俺、別の意味で『魔』の領域に入ってるかも?(笑)

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