僕が思う、すごい人とは? | 札幌のオーダー家具・オーダーキッチンなら家具工房【旅する木】

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僕が思う、すごい人とは?

僕は密かに、しかしとても深く、感動してしまいました。
本当にすごい人って、こんなところで、こんな風にひっそりと生きているんだ。って思うのです。
聞いてください。

当別の老舗のラーメン・定食屋『かどや』さんが、明日で閉店してしまいます。
当別に来て10年も経つのに、実は、店構えだけで判断して、ついこの前まで入ったことなかったんです。

今日、スタッフと一緒に最後のランチをしに行ってきました。もっと早く、何度も来ればよかった〜。と後悔。

そんな『かどや』さんで、注文したカツ丼を待っていました。
奥さん(と言ってもおばあちゃん)が料理を作って、ご主人は出前に行くんですね。
懐かしい出前の箱(あれ、なんていう名前なんだろう?)を持って。

ご主人が出てった後、カウンターの上にラップで蓋された味噌汁が乗っていました。
出来上がったラーメンをカウンターに乗せようとした時、奥さんが気がついて、独り言のように、
「あら〜、忘れたのかしら。」と。
でも、そのままにしてるんです。
僕はなんで味噌汁を下げないんだろう?と思っていました。

しばらくしてご主人が帰ってきました。
僕はすぐに奥さんがご主人に、「味噌汁忘れてったよ。」って言うものとばかり思っていたんですね。
それなのに、奥さんはちっとも味噌汁のことを言い出さない。
ご主人も、カウンターの上の味噌汁に全然気がつかないで、僕たちに水を注いだりしている。

完全に人ごとなんですけど、僕はカウンターの上のポツンと置かれた味噌汁が気になって。
あれ?奥さんも味噌汁の存在を忘れちゃったのかな?なんて思っていました。

しばらくして奥さんが、料理をしながらサラリと。
「あなた、さっきの出前、漬物と味噌汁の数、合ってた?」と。
ご主人は「ん?合ってたよ。」
それを聞いた奥さんは、
「そう。じゃあ私が間違えたのね。」と小声で言って、スッとカウンターの上の味噌汁を下げるのです。
僕が見る限り、その声はご主人には聞こえてなさそうでした。

ん〜、あっぱれ!

一緒に行ったスタッフも、そこにいたお客さんも誰もこのやりとりに気がつかずにいたのですが、僕1人、密かに、深く、感動して、ちょっとグッと来てしまいました。

僕の奥さんだったら…違う違う!危な!!!
僕が奥さんだったら(笑)、きっと旦那が帰ってくるや否や、「味噌汁忘れてったよ。」と言ったんじゃないかな?そして、「忘れてないよ。」との返事だったら、「一応確認して。」なんて言って、届けたお客さんに電話させたかも知れない。

ご主人は、この味噌汁が一つカウンターに残っていたことによる出来事のことを、全く気がついていないのです。
もしご主人が確認していなくて、味噌汁が一個足りなくて、電話でもかかってきたら、「すみません。」と言って届ければいいだけの話なんですもん。

この人はすごい人だ!
なども言っちゃいますが、僕はなんか、ものすご〜く感動したんです。
そして思いました。
こんなことが当たり前にできる人になりたい!と。

シーンと静まり返っている湖を、シーンとさせたまま生きられる人が、本当にすごい人だと思うのです。すごい波を起こす人が凄く見えるし、そうしたがるものだけど、本当に魂レベルが高くてすごい人は、こう言う人なんだろうと、僕は思うのです。

ん〜。なんか気持ちをうまく文章にできてないような気がしますが、伝わりますか?僕の気持ち。

最後、お会計の時。
奥さんに「別々ですか?」と言われたので、「一緒でお願いします。」と言った直後、僕はまた心を奪われるのです。
奥さんがあるもので3人の合計を計算し始めたのです。
そう、そろばん!

うん!このお店には、レジじゃなくて、そろばんがいい!
そしてそのそろばん捌きが小気味いい。
珠を弾く音がなんとも美しい!

「もう明日で閉めちゃうんですか?」と聞きました。
返事が返ってきました。
「もう53年もやってるからね。ありがとうね。寂しくなるね。」

53年、夫婦2人でずっと一緒にやってきたんですね。
その理由を垣間見た気がして、なんかとっても温かい気持ちになりました。

「もっと何回も来ればよかったです。ありがとうございました。」
と言って店を出ました。