寒いことが、人の気持ちを暖めるんだ | 札幌のオーダー家具・オーダーキッチンなら家具工房【旅する木】

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寒いことが、人の気持ちを暖めるんだ

今年、工房のある当別は雪が多い。
降り積もる雪と、屋根から落ちる雪で、すでに工房の窓は、僕の身長をゆうに超えています。
雪だけでなく、今年は寒さも厳しいようですね。
でも、北海道の厳しい寒さは、時に、美しい風景を見せてくれます。

マイナス10℃を下回る寒い日に降る雪は、その姿を結晶のまま、ゆらりゆらりと舞うように降りてきます。腰を下ろしてふんわりと積もった雪をじっくりと見てみると、可愛くて美しい雪の結晶がいっぱい。
「どれも結晶の形が違う!」なんて感動していると、ヒューっと風が吹いて、思わず寒さに立ち上がる。
すると舞い上がった雪の結晶が日の光に照らされて、僕も周りの風景がキラキラっと輝いてる。
ちょっと少女漫画の金髪の美青年になった気分。
↑↑↑
ほとんど読んだことはないのですが、僕の少女漫画のイメージ(笑)

そして、その美青年は、自分の世界に酔いしれながら、言います。
「寒いことが、人の気持ちを暖めるんだ。離れていることが、人と人を近づけるんだ。」

あ、ちなみにこのセリフ、『旅する木』の社名を取らせてもらったアラスカの写真家、星野道夫のエッセイ『旅をする木』の中の一説。僕の持っている、何度も読み返し、ボロボロになった『旅をする木』のこのセリフの横に、赤線が引いてあります。
まあ、言ってみれば、パクリです。

師走になったこの季節、毎年実家の長野の親が送ってくれるものが、今年も届きました。
父親が作った甘酒。

僕が子供の頃から、甘酒は父が作っていました。
当時、豆炭アンカって言うんですか?豆炭のコタツに米麹で作った甘酒を入れていて、父はしょっちゅうかき混ぜてはコタツの中の、温度の高い場所や低い場所などに移動したりして、発酵の具合を調整していました。

僕はというと、学校から帰ってくると、コタツに潜り込んで、こっそり容器を引っ張り出して、指でペロリ!
苦味を感じるほどの、まったりとした甘酒独特の濃い甘みがたまらなく好きでした。

甘酒だけでいい。って言ってるのに、うちの親はいつも、訳の分からないいろんな乾物やらなんやらを、箱いっぱいに詰め込んで送ってくる。
これは僕が大学で一人暮らしを始めた仕送りの時から変わらない。

今はそんなことないんだろうけども、僕らの頃の地方の国立大学の学生は、なんというか、貧乏である事に一種の誇りのような風潮がありまして。
「俺はこんなに貧乏なんだぞ。」ということがちょっとした自慢話になる。
親から荷物が送られてくるなんてだけで、先輩からお坊っちゃま扱い。

僕の母親は結構な過保護で、中学生の僕に「目に入れても痛くない。」と平気で言うような親で、僕はそんな環境が嫌で嫌で、家を出たくて仕方なかった。

そうしてやっと大学生になって、一人暮らしを始めて、せいせいしている僕に、母親が仕掛けてくるのは、電話攻撃と仕送り攻撃!
僕の部屋はサッカー部の同期や後輩のたまり場になっていたので、電話がかかってくると、恥ずかしくて、電話に出なかったり、冷たい態度で電話を切ったりしてました。

送られてくるものといえば、大抵外食で、たまの自炊で作るものなんて、カレーくらいなものの僕には、どう扱ったらよいものか検討もつかないものばかり。
結局そのまま箱に入れっぱなしにしていて、そのうち箱を開けるのが怖くなって、そのままゴミ箱行き。
今思うと、ひどいもんですね。

とはいうものの…。
先日送られて来たものも、やっぱり取り留めなく、きっと、甘酒を送ろうとして、箱の隙間を埋めるために、適当にあるもので、日持ちしそうなものを入れたんだろうな。ってものばかり。

相変わらずだなぁ。なんて思いながら、お礼の電話をすると、コロナは大丈夫か?調子の悪いところはないか?仕事の方はどう?怪我はしてないか?
学生の僕に仕送りをしていた自分と同じくらいの年になった僕に、まるで学生の僕に話すのと同じように、心配ばかり。
「田舎にいたら、コロナなんてあまり関係ないし、健康も問題ないよ。仕事もありがたいことに、たくさん受注をもらってる。」
怪我は…まあ、いろいろあったけど、そこは。
「怪我もしてないしから大丈夫。」

両親はもう80を超えて、本当は僕の方が心配をしなきゃいけないんだけど、機関銃のように話す母親に、結局最後の最後に、「そっちは元気にやってるの?」というのが精一杯。
まあ、その歳で、機関銃のように喋れるんだから、元気なんだろう。なんて勝手に納得するものの、やっぱり心にふっと不安のようなものがよぎる。

 

大掃除を終えて、仕事納めをしたシーンとした工房で、静かに心地よい1人の時間を過ごしたくて、薪ストーブに火をつけ、甘酒を温める。
のんびり休んでいる機械たち一つ一つに「ありがとう。」と声をかける。
薪ストーブに火はついたものの、築60年の木造の体育館は、至る所に隙間があって、やっぱり寒い。
だから、薪ストーブを抱くように温まりながら、甘酒をすする。

「あ〜、懐かしい。」
つい漏れた心の声が、”美味しい”じゃなくて、”懐かしい”だったことにちょっと驚いてしまう。

甘酒の独特の程よい甘さの中に、潜り込んだ豆炭コタツの温かさと、匂いがしたような気がした。
そして「コタツに潜って寝ると、風邪ひくよ。」という母の声。

「寒いことが、人の気持ちを暖めるんだ。離れていることが、人と人を近づけるんだ。」

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明日は大晦日です。
コロナかで世の中は振り回された一年でしたが、旅する木はあまり変わりなく、平静な2020年を終えることができました。
これも、皆様の支えと応援があったからこそと、感謝しております。
本当にありがとうございました。
来年は…。

来年のことは来年話ましょうね。
今年最後のつむじ風通信は、今の感謝の気持ちで締め括りたいと思います。
応援、ありがとうございました。