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彼はきちんと敗者になれたのか?

自分だったらどうしただろう?

ちょっと時期を逃してしまって、過去の話になりつつありますが…。。

 

野球ファンでなくとも、選手の立場、監督の立場になったつもりで考えたんじゃないですか?
ロッテの佐々木郎希投手。
二試合連続の完全試合目前、8回での降板。

 

正直にいうと、投げてもらいたかった。
そして見てみたかった。
世界のベースボール史上初、二試合連続の完全試合の瞬間を。

7回ですかね?
相手選手の名前は忘れましたが、カウント3ボール2ストライクになった時は、見ていてドキドキしました。
なんてたって、フォアボールも許されないわけですから。
相当なプレッシャーの中、投じた低めのスライダーに、空振り三振。
思わず、
「よし!」
と叫んでしまいました。

史上初の連続完全試合という歴史的瞬間を見れるかも?なんて期待を持って見ていたら、ロッテの選手が9回の守備につこうとしているのに、ベンチのフェンスに腕を置いて、グランドを眺めている佐々木選手の姿。

え?…なんで?
実況しているアナウンサーも状況をのみ込んでいない様子。

なんとここでピッチャー交代になったんですね。
あと一回なのに…(実際には0対0の同点なので、9回の裏で決着がつくとは限らなかったのですが)

投球数が100球を超えて、怪我のリスクを回避するため降板したんだそう。
テレビ画面で見る限り、佐々木投手は悔しそうな表情ではなく、飄々(ひょうひょう)としている感じに見えました。

きっと野球ファンの人は誰もが思ったのではないでしょうか?

またか。

 

遡ること3年前。大船渡高校時代、夏の甲子園を目指した岩手県大会。
と、この説明の前に、そこに至る経緯を。

佐々木郎希選手は、中学時代からすでに注目されている選手で、全国の名門の高校から誘いがあったんだそう。
「ずっと一緒にやってきた仲間と一緒に甲子園に行きたい。」と、それらの誘いを断って、地元の、しかも公立高校の大船渡高校を選びます。
そして、佐々木と一緒に甲子園を目指そう!と集まった仲間たち。

9歳の時に東日本大震災の津波で、父親と祖父母も亡くした後も、地元の仲間と野球を続けた地元愛、仲間との絆が強かったんだろうと勝手に想像してしまいます。

そういう経緯があった上での夏の甲子園を目指す県大会。
私立高校が他県から優秀な選手を引っ張ってきて、レギュラーのほとんどが実は他県出身なんていうのが当たり前のこの時代に、県大会の決勝戦まで公立高校が勝ち残ることは珍しいのですが、大船渡高校は決勝戦まで勝ち進んだのです。

翌日の決勝戦を前に
「次勝たなければ、一回戦で負けたのと同じ。」と意気込んでいた佐々木投手ですが、強豪花巻東との決勝戦のマウンドに立ちませんでした。
準決勝までの疲労のための怪我を避ける監督の判断でした。

甲子園で死闘を繰り広げた投手の多くが、その後プロに行った後、怪我で評判ほどの活躍をせずに静かに去っていくことは事実です。

あの松坂投手も、横浜高校時代にあれほど肩を酷使しなければ、もっと選手生命が長かったでのはないかと言われています。
最近の例で言えば、ハンカチ王子こと斎藤佑樹投手も、プロに入った時にはすでに肩を痛めていたんだとか。

類稀なる才能を持つ佐々木選手を、擁護しようとする指導者たちの気持ちも理解できます。
佐々木投手を決勝戦に投げさせなかった大船渡高校の国保監督、二試合連続完全試合目前で降板させた井口監督、彼らの判断も、それは苦渋の判断だったと思います。この判断に対して当然ながら批判が集中する。

それに対して、ダルビッシュ投手や元巨人の桑田投手などは監督の判断を支持しています。

どっちが正しいか、正しくないか?そして、監督の判断は正しかったのか?ということは誰にもわかりません。
あの決勝戦を投げていたら、佐々木投手の肩は壊れていたか、壊れなかったか?
二試合連続完全試合の最後の9回を投げ切っていたら、佐々木投手の肩は壊れていたか、壊れなかったか?
この”たられば”の話はどこまでいっても結論には至らない。

ただ、この指導者の判断を推し量る物差しがあるとしたら、佐々木投手の胸の内にあると思います。

今回の完全試合目前での交代については、佐々木投手のコメントは出てきていません。表情もそれほど悔しそうではない。チャンスもまだある。
ただ、甲子園はちょっと違う。チャンスはあのいっときしかなかった。

「登板しなかったことについてどう思うか。」
と問われると、およそ8秒間沈黙した後に「監督の判断なので……」と声を絞り出した。

人生で負けを経験することは、その後の人生において、大事なことのような気がする。
ただ、それには条件ある。

『きちんと負けること』

彼はきちんと敗者になれたのか?

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今回のブログの内容にちょっと関連して。

”清原が背負ったもの”

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