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見せられない手紙

週末、10数年ぶりにカヤックで川下りをしました。南富良野の空知川の支流のシーソラプチ川。何も変わらず、美しい川です。

最近、夜、映画鑑賞にハマってて。
電気消して、ベットに横になりながら見てるのが至福のとき。
先日見た映画『きっと、うまくいく』は、僕の映画ランキングのTop3に入るいい映画でした。見たことない人は是非、見てください。

ということで、夜にブログを書いているので、ちょっとさぼってました…。。言い訳

ちょっと前になってしまいましたが、ブックカバーチャレンジをしました。
思い出深い7冊の本を紹介させてもらい、そして7名の方にバトンを渡したのですが、こういうのって荷が重くて迷惑だったかな?と心配したのですが、みなさん、「昔を思い出したりして、とても楽しかった!」と言ってくれて、ホッとしました。

僕も昔読んだ本を引っ張り出してきて並べてみると、どの本も僕の人生にちょっとずつ影響を与えてくれて、久しぶりにページをめくってみると、それらの言葉が、僕の心の奥の、カラカラに乾いていた部分にサラサラサラって水のように染み込んで、潤して、瑞々しく満たしてくれるのです。
僕の心は、出会ったたくさんの言葉でできているのかも知れない。

バトンを渡した一人は、僕の大学時代のサッカー部の一つ後輩のY。
地方の大学(僕らは新潟大学)は、みんな一人暮らしをしているので、お酒を買って、誰かの家で騒ぐのが常。居酒屋で飲み食いするほどみんなお金がないので。
僕の部屋は後輩たちのたまり場になっていて、しょっちゅう騒いだり、夢を語ったりしていましたね。
そんな中でも恋愛話しをできるのはごく一部で、特に僕もYも、遠距離片思い恋愛をしていたので、よく二人でお酒飲みながらそんな話をしたものです。
まあ、今振り返ると、僕らの心は、魚も住めないくらい純粋でしたね。そりゃ、モテないわけだ(笑)

ああ、”魚が住めないくらい純粋”とは、”水清ければ 魚棲まず”ということわざがあって、僕がいつも例に出すのは、徳川家康と石田三成の天下分け目の戦い(関ヶ原の戦い)です。

豊臣秀吉の遺言をことごとく守らずに、のらりくらり、じわじわと権力を握ろうとする家康に対し、石田三成は、秀吉への忠義を守り、人情を挟まず正しさを主張し、家康と対峙するのですが、その姿勢が各武将の反感を買い、数では優勢だったはずなのに、結局は多くの武将に裏切られ、負けてしまうのです。
僕が推測するに、他の武将たちも、決して家康を敬拝し味方したいわけはない。だけど、三成に従うのは気分が悪い。ということだったんだろうと思います。
家康は三成の頭の回転の速さと、能力を買っていたんですね。関ヶ原で勝利をおさめた家康は三成の性格について称します。
”水清ければ 魚棲まず”
綺麗すぎる水には、魚は棲めないんだと。多少の汚れや、道を踏み外すくらいの愛嬌が人を引きつけんだと。

おっと、僕とYが純粋すぎてモテないという話から、ずいぶん話が逸れてしまいました。

あ〜、でももう少し、歴史の逸話に耳を傾けてください。

三成は捕らえられ、処刑されるのですが、その直前のこと。
三成は「ノドが渇いた。水が飲みたい」と言います。
すると使いの者が
「残念ながら、今は水がない。しかし代わりに、柿がある。これを食べてはどうか?」
三成は、答えます。
「柿は、体を冷やし、お腹を壊すことがあるから、いらない」
柿を渡そうとした男は、笑いながら言います。
「お前は今から首を切られるのだぞ?それなのに、その後の体調のことなんか心配してどうするんだ?」
すると三成はこう言うのです。
「立派な人間たるもの、たとえ眼前に死刑を控えていたとしても、その最期の瞬間まで体を大切にし、一生懸命生きるべきなのだ」

石田三成の人物像がよくわかる逸話ですね。

Yに話を戻します。
ブックカバーチャレンジのバトンをYに渡した直後、Yからラインがきました。

「昨日、実家に帰ったら新潟時代の手紙(嫁さんには見せられないやつ)がたくさん出てきまして、久しぶりに読み返したら、久しく感じていなかった、なんとも言えない胸の中がもやもやして…。青春ってこんな気持ちに毎日なってたのかな?そりゃあ力出るわな。って思った。」

という内容。
きっと、Yは、昔の本を探してる最中に、学生時代の懐かしい手紙を見つけたんでしょう。
このライン、早朝に届いたのですが、ノンノ(北海道犬)の散歩中、近くの神社の境内で腰をおろして休んでいる時に返事を書きました。田舎の神社なので、誰もいなくて、静かでいい雰囲気の中で。

「わかる、その気持ち。心の奥の、すっかり忘れてたホコリかぶって白くなってた引き出し開けたら、健気にずっと待っていてくれた昔の自分が、ちょっと気まずそうに、歯に噛んだ笑顔で、嬉しそうにしてるんだよね〜。胸がキューンと苦しくなる。そしてなんか、心の真ん中に明かりが灯るよね。そこの明かりを灯せるのは、世界中にただ一人。昔の自分。」なんて。

そして、Yは50にして中免を取って、学生時代に欲しかったけど買えなかったバイクを買って、北海道にツーリングに来るという夢を、僕は学生時代から始めて、独立してから10数年やってなかったカヤックでのリバーツーリングを再び始めることを言い合いました。

僕やYのアパートでざんざん語り合ったあの頃から30年。う〜ん、俺たち、いまだに結構純粋かも?なんて思って笑ってしまいました。

ああ、だからあれからも相変わらずモテないのかも…(笑)。。

いつもはのんびりもっと休憩したくて、引っ張っても、動こうとせずに抵抗するノンノですが、僕が長々と思いにふけっているので、そろそろ行こうよ!っとムクっと立ち上がって、階段を降りようとするノンノにこっそりと言いました。

「ノンノ、実はさ、俺もあるんだよね。見せられない手紙…」