親切と迷惑の境がわからない時代ですね | 札幌のオーダー家具・オーダーキッチンなら家具工房【旅する木】

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親切と迷惑の境がわからない時代ですね

先ほど、近くの温泉に行ってきました。
体を洗っていると、鏡越しに車椅子に乗ったおじいさんが入ってきたんですね。
おじいさんは、そのまま湯船の脇まで車椅子を進めて、ストッパーをかけて、湯船に入ろうとしています。

木の車椅子を作っている過程で、障害を持った方の、自力での車椅子から椅子への移動は見るのですが、車椅子の位置から、低い湯船の縁にどうやって移動するのかな?と見ていました。

おじいさんはストッパーをかけて、車椅子の車体を使って、手と腕で体重を支えながら、慎重に体を下げていき、湯船の縁に腰掛けました。

低い位置から高い車椅子に座るのは、降りる動作より大変なのは想像がつきます。
手や体がお湯で濡れたら滑るだろうし、これは大変だな。と思って、体洗うのをやめて、おじいさんの近くに行って、
「車椅子に乗る時、大変だったら手伝いますよ。」
と声をかけました。

すると、おじいさんは口に手を当てて、
「空知で400人」

???

ちょっと意味がわらなくて、「何ですか?」
と聞き返したら、
「コロナ、空知で400人」
そう言った後、ずっと口に手を当てて、息を止めているんです。
温泉なので、お互いにマスクはしてないですからね。

 

そうか、それは逆に悪いことをした。
と思って、洗い場に戻って体を洗ってから、おじいさんと離れたところで僕も湯船に浸かっていました。

しばらくすると、おじいさんは湯船から縁にお尻を乗せて、車椅子に乗ろうという動作を始めました。
心配だったのですが、近づくわけにもいかず、見守っていました。

やっぱり手や体は濡れているし、お尻が思うほど上がらないみたいで背中で車椅子を押してしまって、車椅子がどんどん体から離れていってしまう。
そんなことを3,4回繰り返していて、周りの人は気づいていないみたいで、とうとう見ていられなくて、慌てて近づいて、後ろから腕をもちあげて、お尻を車椅子の座面に乗せました。

すぐに離れなきゃ。と思って、僕はまた湯船に戻ったんですけど、おじいさんはそのまま急ぐ感じで脱衣場に出て行きました。

 

もちろん、感謝されたいとか、いいことをしたいとか、そんなことで声をかけたり、行動したわけではないんですけどね。

温泉に浸かって、窓の外を眺めながら、
「こんなことがいつまで続くんだろうな〜。」
とちょっと寂しくなりました。

どうすればよかったのかな?
ほっとけばよかったのかな?
なんて、ぼんやり考えていました。

 

服を着て、脱衣場から出ようとした時、後ろから声をかけられました。
脱衣場の端の方にさっきのおじいさんが座っていました。

「さっきはありがとう。」

 

これでよかったのかな?