風に包まれたなら | 札幌のオーダー家具・オーダーキッチンなら家具工房【旅する木】

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風に包まれたなら

「風がすっぽり体をつつむ時、それは古い物語が吹いてきたのだと思えばいい。
風こそは信じがたいほどやわらかい、真の化石なのだ」    谷川雁『ものがたり交響』より

毎朝5時台に犬の散歩をするのが楽しみなんです。
なぜそんなに早起きして散歩するのが楽しみかと言いますと…

じじいだからです(涙)

違います!

感動して叫びたくなったり、神様に感謝したくなるほどの美しい風景に出会えるから。
そして、そのどれもが、昨日と同じではない。

新しい一日を、美しい風景を見て、感動して、感謝して始められることの喜びと幸せを知ってしまったら、布団からよいしょって立ち上がるのが ←  じじいか!
楽しみなんです。

今日はどんな美しい風景を見せてくれるんだろう?って。


まる、後ろで太陽が爆発してるよ!


こんな風景から今日が始まる。


こんなしっとりとした幻想的な朝も好き。


本当はこの木々たち、緑なんです。朝日を浴びて、オレンジに染まっている。

 

遥か向こうの山から現れる一点の神々しい光が、みるみるうちに、大きく、丸くなっていく一方で、僕の真上の空はまだ瑠璃色で、薄白い月がひっそりと浮かんでいる。


↑ パノラマで撮ってみました。上の方に小さな月が写ってます。

 

新しい1日の入れ替わりの儀式のよう。

眩い朝日とひっそりと消えゆく月。
いったい二人の間でどんな会話がなされているんだろう。なんてことを想像してしまう。

+++++++++++++++++

【友達同士の月と太陽】

太陽 「おはよう。交代の時間だよ〜。」
月  「おはよう。最近来るの、遅くなってない?」
太陽 「しょうがないよ。もう夏至を過ぎて秋なんだから。毎日少しずつ遅くなるさぁ。」
月  「そうよね。あ、あの人、例の、犬の散歩している。今日もあなたがちょっと顔出したら、ずいぶん感動して、『ありがとう〜』って叫んでたわよ。私にも、『ありがとう。お疲れ様』だって。おかしな人ね。」
太陽 「嬉しいことだよ。」
月  「そうね。嬉しいね。じゃ、私寝るね。」
太陽 「うん。おやすみ。」

 

【アイドルと熱狂的ファンの場合】

ナレーション 「皆様、大変お待たせしました。それでは太陽さんの登場で〜す!」
派手な音楽と共に太陽が登場
月  「キャー!太陽〜!!ステキ〜♡ 私の太陽〜♫」
太陽 「ようこそみんな!今日は俺のために来てくれて、ありがとう。感謝してるゼ!今日は思いっきり楽しんでくれ!」投げキッス💖
月  「キャー、今、私を見てた!私に、私だけに投げキッスしてくれた〜!!!キャー!あ〜もうダメ〜。…私…、もうダメ。…気絶しちゃ…」
月、フェードアウト

 

【熟年夫婦の場合】

月  「やだ〜。それでそれで?どうなったの?」
星A 「それがね、年に一回しか会えないから、織ちゃんはず〜っと楽しみに待ってたのよ〜。手作りのお弁当作って。健気じゃない?」
星B 「お弁当?織ちゃん、機織りは得意だけど、料理は得意じゃないのよ。」
星A  「そうなの。だからお料理教室通って、頑張ってたのよ〜。」
月  「か〜わ〜い〜い〜。織ちゃん、そういう娘よね〜。一途っていうか。昔からそういう娘だったわ〜。」
星B 「そういう娘は騙されちゃうのよ〜。」
月  「あ、ちょっとハーブティーお替りしてくる。ちょっとストップね。その話。私がいない間に進めちゃダメよ。」
星 A 「ちょっとあんた、また?もう何杯飲むのよ。」
月  「だってドリンクバーよ。元とらなきゃ!あんたたちももっと飲みなさいって。」

ドリンクバーに取りに行く月

星B 「もう月の本性知ったら、人間たちもビックリよね。」
星A 「ほんっと!人間たち、昔っからお月見とか言って、俳句読んだりして、月を愛でてるけど、本性はただの図々しいババアだからね。」
星B 「ア〜ハッハ〜。図々しいババアね。確かにね。」
星A 「まあ、私たちも人のこと言えないけどね。も〜、人間ってバカよね〜。この前もある男がさあ、カッコつけて、織ちゃんと彦と私を指差して、あれが夏の大三角なんだよ。なんて言ってて、女が、キャー、ステキ。なんでも知ってるのね。なんてやってるの。バッカじゃない?っての。」

月が帰ってきて。

月  「何の話?私がいない間に、私の悪口言ってないででしょうね〜。」
星B 「言ってないわよ〜。何にも。」
月  「で、で?さっきの続き。織ちゃんと彦。」
星A 「そうそう、それでね、年に1日、その日しか会えないじゃない?あの二人。」
星B 「それも可哀想な話よね〜。そもそもなんで年に1日しか会えないの?」
星A 「それがね、昔は彦も真面目だけが取り柄の牛飼いだったのよ。」
月  「ちょっとB、話を逸らさないでよ。そんな昔話しはいいのよ。で、どうなったのよ。」
星A 「それがさ、彦のバカったらさあ。」

東の空が明るくなってくる。

月  「も〜!、ほら〜、うちの人、帰ってきちゃうじゃないのよ〜。あんたが話逸らすから。」
星B 「私のせい?あんたがドリンクバーのお替りばっかりしてるからよ。」
星A 「別にいいじゃない。まだ居たって。もうちょっと。」
月  「うちの人、今日早くない?今何時?まだ4時台でしょ?」
星B 「もう5時半過ぎてるわよ。」
月  「え〜?もうそんな時間?やだ〜、もう。楽しい時間は早いわね。一番いいところだったのに〜。帰るわ。ほんとに5時半過ぎてる?」
星B 「過ぎてるって〜。もう43分よ。」
月  「ヤバ!もう、亭主元気で留守がいい!って本当よね〜。」
星A 「じゃあ、続きはまた明日。」
月  「また明日ね。」

 

【悩んでいる太陽】

太陽 「チュプよ、君はいいなぁ。みんなに愛されて。」
月  「クㇷ゚こそ、みんなに感謝されて、愛されてるじゃない?」
太陽 「そんなことないよ。君は、満月とか三日月とか、いろんな名前を付けられて。見えなくたって、新月って言われる。そして、お月見、十五夜なんて言って、みんなに見てもらえて、歌に読まれたりしてる。それに比べて、僕は見られることもあまりないんだ。僕を見る時、黒いメガネかけたりするんだよ。悲しい。」
月  「あなたの光は強烈だからね〜。」
太陽 「それに、みんな僕のことを明るくて、元気で、前向きな代名詞みたいに思ってるけど、本当の僕は、根暗で、内気で、ネガティブ思考なんだ。誰もそんな風に思わないけど、実際、そうなんだ。」
月  「まあ、私たちは知ってるけどさ。もともとあなたはそういう性格だったもの。そんなあなたが太陽になる。って手を上げた時、私たちみんな、ビックリしたもの。」
太陽 「もう忘れちゃったよ。そんな昔のこと。」
月  「私は今でもはっきり覚えているわ。あの時のこと。50億年前のこと。」
太陽 「あれから50億年も経ったんだ。早いなあ。」

[50億年前の地球]

人間も動物も、木々や草、何もかも全く動かない。

創造主「神々よ、私はこの地球に人間や、動物、植物など様々なものを作った。だがまだこれらには魂が芽生えていない。だから彼らは動くことができない。魂は火(太陽)と空気と水(海)で作られる。どなたか、太陽になろうというものはおらぬか。空気になろうというものはおらぬか。海になろうというものはおらぬか。

誰も答えない。

創造主「太陽は自らの体を燃やさなければならない。空気は自らの体を消さなければならない。海は自らの体を沈めなければならない。それでも人間や、動物、植物のために、太陽になろうというものはおらぬか。空気になろうというものはおらぬか。海になろうというものはおらぬか。」

創造主「力を貸してくれ。」

クㇷ゚、そっと手を上げながら
クㇷ゚ 「僕…太陽になります。」
チュプ「クㇷ゚、あなた本気?太陽は自分の体を燃やすのよ。」
クㇷ゚ 「うん。」
チュプ「…」
クㇷ゚ 「僕、変わりたいんだ。内気でネガティブな自分を変えたいんだ。みんなを明るく照らす存在に。誰かに必要とされる存在になりたいんだ。」

創造主「ああ、クㇷ゚、やってくれるか。太陽になってくれるか。」
チュプ「創造主、私とクㇷ゚は一つの魂を分け合いました。クㇷ゚が太陽になるなら、私を、太陽と共に生きる、太陽を見守る存在にしてください。」
創造主「わかった。チュプがクㇷ゚を見守ってくれていたら私も安心だ。太陽の光を受けて輝く月を作ろう。チュプは月になってくれ。」
チュプ「ありがとうございます。」

そうしてクㇷ゚は太陽に、チュプは月になりました。
そして、クㇷ゚の友達のニシは空気に、アトゥイは海になりました。

創造主「いいかい、クㇷ゚。人間は眩しくて、太陽を見ることはできない。それいでもいいか?」
クㇷ゚ 「はい。」
創造主「ニシ、人間には見えないから、空気があることに気づかない。それでもいいか?」
ニシ 「はい。」
創造主「アトゥイ、人間はしょっぱい海の水を飲むことができない。それでもいいか?」
アトゥイ「はい。」
創造主「ありがとう。君たちのために、風を作ろう。きっと風は君たちを助けてくれるであろう。」

こうして地球に太陽、空気、海、そして月と風が生まれ、人間や動物、植物は魂を宿し、自由に動き、成長することができるようになりました。

[現在]

月  「クㇷ゚、あなたはそれを解って、太陽になったのよ。」
太陽 「そうなんだけどね。やっぱり寂しくなる時もある。それに、チュプ、君は僕が現れるとすぐに消えちゃうじゃないか。」
月  「クㇷ゚、私はあなたの光のお陰で輝けるのよ。あなたがいなければ、暗黒の世界に漂うだけ。誰も私の存在に気がつかないわ。自分で光を発することは出来ないんだもの。あなたがいてくれるから、私はこうしていられるの。だから私はいつでもあなたを感じているわ。消えていなくなってるわけじゃない。いつでもあなたと共にいる。」
太陽 「ありがとう、チュプ」
月  「少しは元気でた?心配。」
太陽 「うん、大丈夫。元気でた。」
月  「だったらよかったけど。私、もう見えなくなっちゃうけど、心は一緒だからね。元気出してね。」
太陽 「わかった。じゃあね。チュプ」
月  「じゃあね、クㇷ゚」

一人になる太陽。

太陽 「なんて言ったものの… なんか元気でないんだよな。」

遠くから風が吹いてきて、風と共に黒い雲がやってくる。
空が一気に暗くなって、ポツリポツリと雨が降り始める。
やがてザーザーと土砂降りに。

太陽 「今日は雨か。なおさら誰も僕のこと、見てくれないなぁ。」
暇を持て余している太陽。

ふ〜。ため息をつく太陽。

[地上]

学校に通う子供たち

「あ〜、何で雨んだよ〜。遠足楽しみにしてたのに〜。」
「ホントだよな。駄菓子屋でおやつ、買ったのに。」
「天気予報では晴れだったのに〜。」

「わ〜!!!」
「なに〜?傘が飛ばされる〜」

急に大きな大きな強い風が吹いて飛ばされそうになる人々。
その風と共に、分厚い雲がサーっと見る見るうちに遠くに消えていく。
太陽の光がカーテンを開くように、向こうからこっちに向かって差し込んでくる。
一気に世界が明るくなる。

子供たち、空を見上げながら。
「わ〜。すごい〜。眩しいけど、綺麗〜!」
「遠足やるよね〜!」
「やった〜!嬉しい〜!」
「太陽さん、ありがとう〜。」

会社に向かう人たちも、農作業の準備を始めた人たちも、漁から港に帰ってきた人たちも、みんな空を見上げながら、清々しく日の光を感じている。

いつの間にか風は収まっている。

子供も大人も、それぞれに雨上がりの澄んだ空気を胸いっぱい吸い込んでいる。
海がキラキラと輝いてる。

太陽 「みんな僕のことを喜んでくれている。嬉しい。チュプ、嬉しいよ。」

子供たち
「わ〜!見て〜!すごいよ〜。」
「すごい!こんなの初めて見た〜!」

太陽と反対側の空に、大きな大きな、鮮やかで、それはそれは美しい虹がかかっている。

太陽 「ねえチュプ、創造主はいつの間に、虹を作ったんだろう。」
チュプの声「ほんとね。私たちに内緒でね。」

+++++++++++++++++

のんびりとノンノ(北海道犬♀13歳)の散歩をしながら、いろんな月と太陽の想像をしていると、あたたかで、優しい風に包まれる。
土や草の匂いを嗅いでいたノンノは、遠くから風がやってくるといつも、顔を空に上げて、本当に気持ちよさそうに風を感じるんです。
そしてクンクンと風の匂いを嗅いでいる。

この顔が好き。

「風がすっぽり体をつつむ時、それは古い物語が吹いてきたのだと思えばいい。風こそは信じがたいほどやわらかい、真の化石なのだ」

そんな時、いつも、この言葉を思い出す。

ノンノ、いったいどんな物語を感じているの?

愛してる