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技はなんのためにあるのか?
「俺はいい。木に謝れ!」
「木は立っていたかったんだ。それなのに、俺たち人間に切り倒されて、切り刻まれて、こんな姿にされて、やって来たんだぞ。それをくだらない不注意でミスられて、ゴミ箱行きなんて、可哀想だろ!」
新人がミスをして、材料が使えなくなってしまった時、僕はこう言って叱ります。
そしてその材料を自分の部屋に飾らせておきます。
毎日見て、「申し訳ないなあ。」と感じるように。
インスタ、Facebookでは、盛んにアップしているのですが、そういえばHPやブログでは、あまり載せていませんでした。
今、旅する木が提案する家【旅する木の家】の建設中です。
地元、当別にお住まいの、旅する木のお客さんの坪田さんご夫婦が、家の設計を含め、家造りを相談してくれて、【旅する木の家プロジェクト】が始まったんですね。
もう直ぐ完成します。
内装どころか、フローリングを作り、貼ったり、上がり框、建具、窓枠、キッチン、ベンチ、など、あらゆるものを旅する木が製作しました。
10月27日(金)〜29日(日)まで、オープンハウスを行いますので、是非見に来てください!
旅する木らしさいっぱい、遊び心満載、そして豊かな暮らしの王道を行くような家、そしてご家族です。
そんな旅する木の家の建具の取り付けに、一昨日、昨日と現場に入っていました。
本来、家具屋と建具屋は、別業種なので、僕自身、建具の取り付けは手慣れてなくて、いつもに増して、集中してやっています。
最後の追い込みなので、現場にはいろんな業者さんが入っています。
現場では大きな声で指示したり、会話するので、なんとなくその会社の雰囲気、様子がわかるものです。
そんないろんな業者さんの中に、設備屋さんがいます。
いかにもヤンキー上がりっぽい、丸坊主で、ガタイの良い先輩、そして、新人のコンビ。
現場にはよくあるこの手のコンビ。
ヤンキー上がり(本当はどうか知りません(笑))の先輩は、上からの命令口調で、若者に指示をしたり、会話しています。
会話だけを聞いている限り、その新人、なかなか口達者なくせに、技術は…?という感じで、ヤンキー先輩はイライラした口調で
「お前なあ、そんなの〇〇に決まってるべや!」
「それ、上下逆だろ!それじゃあ、付くわけねえだろ!」
的なヤンヤ、ヤンヤの会話が僕の頭の上を飛び交う。
建具の取り付けは、建築に取り付けられた開口枠に、鍵の穴を掘り込んだりするので、失敗が許されないんですね。今更枠を取り外すことなどできないので。
なので、本当は静かな中、一人で集中してやりたいんです。
でも、僕のすぐ近くで作業している設備屋さんのコンビがこの様子。僕もイライラしてきて、心の中で
「うるせーなあ。お前の指導がなってねえんだろ。どうせ自分の説明不足を棚に上げて、できない新人を怒ってるんだろ!」
なんて思っていました。
ひとまずこのうるさい会話がひと段落してから、集中して作業をしよう。と思って、周りの片付けなどをしていたところ、僕の耳にある言葉が飛び込んできました。
「お前なあ、プラグに謝れ!」
え?!
「このプラグ、使えなくなったんだぞ。可哀想だろ。プラグに謝れ!」
「すみません。」
「俺じゃねえ。プラグに謝れ。」
手を止めて、マジマジとヤンキー先輩を見つめてしまいました。
さっきまでヤンキー上がりだと思っていた先輩が、頼もしく、仕事と自分にプライドを持ってやっている職人なんだと、見直しました。
思わず「ヨッ、その通り!」と合いの手を打ちたくなりました(笑)。
いろんな職人を見てきて、一流への道を歩む人、二流で止まる人。
僕のいう二流というのは、その道で飯を食っていかれる人、一般の人からは、高い技術だと思われるレベルの人で、その道の技術の習得の努力を続けられる人が到達できる領域。
さらにその先の領域の扉の存在に気付ける人、気付けない人、それを分けるいくつかある分岐点の一つに、自分の技術は、なにか別の、もっと大きな、根本的な存在に活かさせてもらっている。ということを意識しているか否か?に関係しているような気がします。
そしてこの領域は、2流に到達するまでの道のりよりも、ずっとずっと深くて、長くて、そしてなによりわかりにくい。
自分としては、ずいぶん前にその扉をくぐったつもりでいるけど、今、その領域の中のどこにいるのか、よくわからない。
だから、スタッフの若者に僕がしていることは、その扉があることを伝ること。ただそれだけなんです。
技術は後から付いて来る。
技術が身についた時、その先の扉に気付ける人になって欲しい。
そしてその扉を開けて、深い世界に足を踏み入れる人になって欲しい。
その領域にいる職人の作ったものは、2流の人の作ったものと比べて、寸法を測れば同じだし、例えば写真に写して重ねたら、寸分違わず同じなんだけど、でも、なにかが違う。
感じるエネルギーとでもいうのか、雰囲気というのか。
その、違う『なにか』を、僕は追い求めている。
旅する木が作るものは、『なにか』違う。そんな存在になりたい。
突き止めていくと、
『技はなんのためにあるのか?』
今の僕の思っているその問いの答えが、【旅する木の家】坪田家には凝縮されている。
是非それを、感じにきて欲しいと思います。
元ヤンキー先輩と、出来の悪い(笑)新人の二人のやりとりは、相変わらずなのですが、さっきまでの騒音としか聞こえなかった会話が、先輩の愛のある激励に聞こえる。
『技はなんのためにあるのか?』
いつか、元ヤンキー先輩と、そんな会話をしてみたい。
【旅する木の家】オープンハウス、
是非、お気軽に、遊びに来る感覚で、見にきてください。
お待ちしております。