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人生を肯定していきたい
今、帯広美術館で星野道夫展が開催されています。
先週の日曜日、その企画の中の一つ、『旅をする音楽』というイベントがあり、行ってきました。
スクリーンに映された星野さんの写真と、ピアノの生演奏をバックに、星野さんの奥様、星野直子さんが、星野さんの言葉を朗読するという、とても素敵な企画。
午前中、娘夫婦と、昨年11月に生まれた娘の赤ちゃんと、かばと製麺にうどんを食べに行ったのですが、案の定めちゃくちゃ混んでて、12時の出発予定が、午後1時を過ぎてからの出発になってしまい、帯広美術館に着いたのが午後4時半くらい。(『旅をする音楽』は5時開場/5時半開演)
しかも、相変わらずの下準備不足、行き当たりばったりの僕は、てっきり『旅をする音楽』は帯広美術館で行われるものとばかり思っていたら、まさかの別会場…!!
星野さんの写真を眺めながら、20代半ばで星野さんの著書『旅をする木』に出会ってからの自分の人生を思い返したりして、のんびりと、しっとりとした時間を過ごし、森の中の帯広美術館の周りを散策しながら歩き、静らかに清々しい気分で『旅をする音楽』を楽しもうという僕の予定は、初っ端からガラガラと崩れ去ります。
写真集では伝わらない、力のある生写真を急足で一通り見て、すかさず『旅をする音楽』が行われる会場に向かい、ハアハア言いながら後ろの方の席に座り、なんとか心を整える…
なんともまあ、僕らしい。
でも、星野直子さんが登壇し、もの静かな優しい声で挨拶をされると、スーッと心が落ち着きました。
そして、美しい映像と清らかなピアノ演奏を背景に、もう何度繰り返し眺めたことだろう言葉を、直子さんの声で耳にすると、その言葉で励まされたり、勇気付けられたり、力をもらった時の風景が一つ一つ、思い出されました。
そして、後半に差し掛かった時…
やっぱりその言葉は語られました。
本当にたくさんある、僕の乾いた心を潤してくれる星野さんの宝物のような言葉の中で、どれか一つだけけ、宝物箱の中に入れていいよ。と言われたら、僕はこの一節を選ぶだろう。
「いつか、ある人に聞かれたんだ。例えば、こんな星空や泣けてくるような夕陽を一人で見ていたとするだろう。もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどんなふうに伝えるか?って」
「僕なら、写真を撮るか、もし絵が上手かったらキャンパスに描いて見せるか、いや、やっぱり言葉で伝えるかな?」
「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆく事だって…
夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆく事だと思うって」
この一節を星野直子さんの優しい声で語られた時、『家具工房旅する木』を立ち上げて間もない頃、札幌で開催された星野道夫展を、当時8歳の娘と見に行った時のことを思い出しました。
その時書いたブログです。
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2007年1がつ4か 星野道夫展~「星のような物語」
明けましておめでとうございます。
元旦の良さというのは、何か心がリセットされることですよね。
昨年までの良いこと、悪いことが、ここでリセットされて、また新たな気持ちでスタートできそうな気になるところです。
こういう気持ちって大事な気がしますよね。
2007年を神聖な心でスタートしたいと思い、年末から行きたいと思っていた、大丸札幌で開催されている、星野道夫展「星のような物語」を新年早々に娘と見に行ってきました。
「家具工房旅する木」という社名も、彼の著書から取らせてもらったものです。
僕は彼の写真ももちろんですが、言葉により惹きつけられてしまいます。
今回もあるパネルの前で立ち止まってしまいました。
一緒にいた娘がそんな僕に何か感じたようで、
「何て書いてあるの?読んでみて?」
と言われ、
「たとえば、こんな星空や泣けてくるような夕日を一人で見ていたとするだろ?
もし愛する人がいたら、その美しさや、その時の気持ちをどんな風に伝えるかって?」
「写真を撮るか、もし絵が上手かったら描いて見せるか、いや、やっぱり言葉で伝えたらいいのかな?」
「その人はこう言ったんだ。‥‥」
不覚にもそのパネルを読みながら、涙がこぼれそうになり、娘に
「パパ、感動してるの?感動した時は泣いていいんだよ。」
と前に娘に言ったことのある言葉を言われてしまいました。
星野さんの写真や文章を表現出来るような言葉を、僕は持っていないけれど、誘った時、
「写真なんか見たくないよぉ。」
と言っていた娘が、見ている最中、
「来て良かったぁ。アフリカってすごいね!」
と言った言葉が一番表現出来ている気がします。
「アラスカだから!」
と笑いました。
もし時間があれば、パネルの言葉のつづきを読みに見に行ってみて下さい。
感動と神聖な気持ちでスタートした2007年、一つ一つの出会いを大切に一つ一つ良い仕事をし、感動するものを作っていきたいと思っております。
今年一年、どうぞよろしくお願い致します。
https://www.tabisuruki.com/old/page16-1.html#Anchor244491
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8歳の娘と、午前中、赤ちゃんを抱っこしている娘を思い出し、あれから17年経ったんだなぁっと、しみじみと思いました。
この17年は、そのまま、旅する木が歩んだ17年。
そして、息子の歩んだ17年。
娘がとても幸せそうに育児をしていて、よかったなぁ。
息子は彼なりの考えを持って、僕から見たら、あまり人の通らない道なのに、呑気に歩んでいて、僕は振り回されながらも、お陰で楽しませてもらっているなあ。
別れた元妻は、持ち前の明るさで、楽しくやっているんだろう。幸せであってくれたらいいなぁ。
なんてことを思いながら、『旅をする音楽』の中に浸っていました。
そして僕は…
こんな風に、環境は色々と変わったけれど、17年前と変わらず、星野さんのこの言葉に惹かれ続けているということは、あまり変わっていないのかな?
あの頃の僕に言われますね。
「え〜?全然変わってないじゃん」
「でも、『泣けてくるような夕日』なんてもんじゃなくても、最近では、朝の小鳥の囀りを聞いて、可愛いなあって思ったり、ずっと雪の下でうずくまっていた昨年の秋に蒔かれた小麦の緑が、春の風に揺られているのを見て、よかったねっと思ったりするようになったんだよ」
そして旅する木も、17年、何も変わっていないような気がします。
今でも同じように、
一つ一つの出会いを大切に一つ一つ良い仕事をし、感動するものを作っていきたいと思っている。
もし、宝物箱に、もう一つ、星野さんの言葉を入れていいよ。と言われたら…
『人生とは、何かを計画している時に起きてしまう別の出来事』
計画とは別の出来事かも知れないけれど、それでも、いつでも、その出来事、そして人生を肯定していきたい。